第1328回
中国不動産マーケットのチキンレース

今、中国の不動産マーケットでは、
投資家がチキンレースを繰り広げています。

チキンレースとは崖に向かって同時に車を全速力で走らせ、
より崖っぷちに近いところで車を止めた人が勝ち、
という度胸を試すレースです。
崖から落ちるのが怖くて、相手より手前で車を止めた人は、
チキン(臆病者)と呼ばれます。

2008年に金融危機が起こった際に、
株価が一気に1/3以下まで暴落した株式市場は、
投資家の信用を完全に失ってしまいましたが、
同じ時期に不動産価格はほとんど下落せず、
ただでさえ強い中国の投資家の不動産信仰を、
より強固なものにしました。

しかし、不動産価格が上がりすぎて、
不動産を投機の対象としてではなくマイホームとして買って
本当に自分たちで住もうとしている一般庶民には、
全く手が届かない水準にまでなってしまいました。
こうした一般庶民の住宅難を解消するために、
中国政府は昨年以来、
様々な不動産価格抑制政策を打ち出してきました。

頭金比率の引き上げ、住宅ローン規制、
外地人に対する住宅購入規制、そして不動産税の導入。
しかし、中国政府が「これでもかっ!」と繰り出す
数々の不動産価格抑制政策にも関わらず、
中国の投資家たちは不動産を買い続け、
不動産価格は引き続き上昇を続けています。

中国の不動産を指数化している
中国房地産指数系統(CREIS)が発表した、
今年2月の全国100都市の不動産価格によれば、
都市によってばらつきはあるものの、
全国平均では1u当たり8,636元(10万8,000円)と、
前月比0.48%の上昇となりました。

中国政府が不動産価格抑制政策を打ち出しているのに、
どうして中国の投資家は不動産に投資し続けるのか?

それは不動産価格を下げると、
1.不動産販売収入に頼っている地方政府の財政が
  破綻する可能性があること
2.住宅ローンで不動産を買った多くの人たちが
  担保割れで返済不能となり、
  銀行が巨額の不良債権を抱え込む可能性があること
3.不動産マーケットから逃げた大量のマネーが、
  商品市場に流れ込み、ただでさえ深刻なインフレを
  更にひどくする可能性があること
4.不動産を大量に持っている中国共産党幹部から、
  強烈なクレームが来る可能性があること

などから、
中国政府は強力な不動産価格抑制政策を打ち出せず、
故に、不動産価格は下落しない、
と投資家たちが見切っているからです。

中国政府の事情を見切って、
崖に向かって全速力で疾走し続ける
中国の投資家たちの度胸は大したものです。
しかし、全員が強気で走り続けている間は良いのですが、
何かのきっかけで臆病風に吹かれて
ブレーキを踏むチキンが現れれば、
脆弱な地盤はにわかに崩れ始め、
みんな揃って真っ逆さまに
崖の下に落ちていく運命にあるのです。





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2011年4月11日(月)

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