第1424回
日本の「モーレツ社員」と中国の「無責任男」

先日、中国の調査会社・零点研究諮詢集団が行った、
中国の主要10都市の
サラリーマンの平均労働時間調査によれば、
大連市が上海市を抜き中国主要都市の中では
最も労働時間が長いことがわかりました。

しかし、大連のサラリーマンの労働時間が最も長い、
と言っても、1日の平均労働時間は8.6時間。
規定の労働時間が8時間だとすると、
1日平均の残業時間はたったの36分です。
そして、下位2都市、北京市と成都市に至っては、
北京市が8.1時間、成都市が8.0時間と
ほとんど残業していません。

更に、同調査によれば、調査対象者の36.6%が
「勤務中に時間をもてあましている」と回答。
中国のサラリーマンはほとんど残業していないだけではなく、
勤務時間中も仕事がなくて
かなりヒマであることがわかりました。

高度経済成長中にも関わらず、
なんなんでしょう。この余裕は。

1960-70年代の日本の高度経済成長期、
日本の経済成長は家庭や自分の生活を犠牲にして、
毎日夜遅くまで気合と根性で働く
「モーレツ社員」が支えていました。
そして、そうした現実に対するアンチテーゼとして、
植木均演じる
日本一の「無責任男」・平均(たいらひとし)が、
全く仕事をしないのに
要領だけでスイスイと世の中を渡っていく、という
無責任シリーズが国民の圧倒的な支持を得たのです。

今の中国は当時の日本と同じように、
毎年10%前後の高度経済成長を続けているのですが、
中国に住んでいても夜遅くまで働くような
「モーレツ社員」にお目にかかることはあまりありません。
もちろん、一部の人たちはモーレツに働いているのでしょうが、
上記の調査結果を見ると、
全体的にはまだまだ余裕がある人が多いようです。

ライフワークバランスの観点から見れば、
サラリーマンが残業せずに余裕を持って働いても、
国家は高度経済成長を続け、
給料も毎年上がっていく、という
今の中国の状態は理想的であると言えます。
家庭や自分の生活を犠牲にせずに、
どんどん豊かになっていけるのであれば、
それに越したことはありません。

この高度経済成長期における
日中サラリーマンの労働時間の差は、
プロセス重視で労働自体を美徳と考える日本人と、
結果重視で平均(たいらひとし)のように
全く仕事をしないのに要領だけでスイスイと
世の中を渡っていく人の方が賢いと考える中国人の、
根本的な考え方の差にも原因があるのかもしれません。





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2011年11月21日(月)

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