第1425回
「寿司は料理と言えるのか?」

先日、中国人の友人と話していて
「日本料理と言えば寿司は欠かせないが、
寿司は料理と言えるのか?」という話になりました。

彼曰く、寿司はおいしいけれども、
酢飯に刺身を乗せて握っただけのものなので料理とは言えず、
専門家がおいしいご飯と新鮮な魚を選んでくれば、
誰が握っても同じ味になるのではないか、とのことでした。

これに対し私は訳知り顔で
「同じご飯と同じ魚でも、一流の寿司職人さんが握るのと、
素人が握るのとでは全然味が違うんだよ」と答えましたが、
そう答えながら「彼が言うことも一理あるな」
と思ってしまいました。

中国料理にはありとあらゆる料理法があります。
「煮る」という料理法を表す漢字だけでも、
煮(じゅう、煮る)、
燉(どぅん、煮込んだ後、味付けする)、
燜(めん、油通ししてから煮込む)、
煨(うぇい、弱火で長時間煮込む)、
滷(るー、味付けした煮汁で、煮含める)、
熬(あお、柔らかく煮る)、
扒(ぱー、煮込んだ後、煮汁にとろみを付ける)

などなどたくさんあり、料理法の豊富さを物語ります。

「世界四大料理」を挙げた場合、
他のメンバーは国によって違ってきたりしますが、
中国料理だけは世界中、
誰に訊いても四大料理の1つに入ることからも、
中国料理の料理法の豊富さと奥深さがわかります。

一方の日本料理。
もちろん手の込んだ料理もたくさんあるものの、
基本的には素材の良さを生かした料理ですので、
味付けは薄め、料理法もシンプルなものが多いです。

寿司は確かに酢飯に刺身を乗せて握っただけの料理ですし、
刺身に至っては生の魚を切るだけです。
「世界四大料理」の1つ・中国料理を擁する中国の人たちが
「寿司や刺身は料理と言えるのか?」
という疑問を持っても無理はありません。

しかし、中国料理が「世界四大料理」の1つに
上り詰めるぐらい料理法を発達させたのは、
裏を返せば、昔からろくな食材がなかったから、
と言えないこともありません。

実際、中国料理の中でも、
昔から比較的食材が豊富だった中国南部の広東料理などは、
素材の味を生かした薄味の料理が多いように思います。
ろくでもない食材をいかにおいしく楽しい料理に調理して、
少しでも食生活を充実させたい、
という中国の人たちの切なる思いが
中国料理をここまで育ててきたのではないでしょうか。

「世界四大料理」には数えられたこともない日本料理ですが、
それは悔しがるべきことではなく、
昔からすばらしい食材に恵まれて、
手の込んだ料理法を開発する必要がなかった、という点で、
むしろ幸せに思うべきことなのではないかと私は思います。





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2011年11月23日(水)

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