第1426回
吊り上がる中国市場への「入場料」

中国政府は新たに施行された社会保険法に基づき、
今月から中国で就業する外国人を対象に
社会保険料の徴収を開始しました。

具体的には現在、中国人就業者が加入を義務付けられている
1.年金、2.医療保険、3.労災保険、
4.失業保険、5.生育保険、
という5種類の社会保険について
外国人も加入を義務付けられ、
保険料率は北京市の場合、
外国人従業員が中国国内で得た収入の約40%に達します。

この社会保険料の支払いはもちろん
日本人にも義務付けられますので、
中国に進出して駐在員を派遣している日本企業の負担は
一気に増加することになります。

ただでさえ高い日本人駐在員の人件費。
ある赤字現地法人の日本人総経理が、
中国人社員を集めて黒字化策を出させたところ、
「総経理が日本にお帰りになれば、
わが社はすぐに黒字化できます」と言われてしまった、
という笑うに笑えない笑い話がありますが、
人件費が更に40%も増加する、ということになると、
帰国を余儀なくされる日本人駐在員も
増えるのではないでしょうか。

この中国の社会保険、
税金のようにタダで取られるわけではなく、
一応、支払った保険料に応じた
社会保障を受けられるようになっています。
しかし、医療保険はまだしも、
年金、失業保険、生育保険などは、
一時的にしか中国に住まない外国人が
保障を受ける機会はほとんどないものと思われます。
そういった意味では、今回の社会保険料の徴収は
限りなく増税に近いものと言えます。

中国は以前は、外国企業の誘致を国を挙げて行っていました。
なぜなら、外国企業に投資してもらえば、
外貨を貯め込めましたし、雇用を生むこともできたからです。

しかし、今や中国は世界一の外貨準備保有国となり、
それが原因で発生しているインフレに頭を悩ませています。
また、雇用についてもブルーカラーの労働者は
全く足りない状態が続いており、
外国企業が中国に工場を作って雇用を生み出すことが、
ありがたいどころか逆に迷惑な状態となっています。

このため、以前は外国企業に来てもらうために行っていた
二免三減(企業所得税を進出から2年間免税、3年間減税)
などの優遇政策は姿を消し、
今では逆に今回の社会保険料の徴収のような
中国市場に入るための「入場料」を取るようになってきました。

今後、ますます市場としての魅力を増す中国。
しかし、したたかな中国政府がそんな魅力的な自国市場を
みすみす外国企業にタダで開放するとは思えません。
中国政府は今後、
爆発的な伸びが期待される自国の消費市場をエサに、
外国企業から取る「入場料」を
どんどん吊り上げていくのではないか、と私は思っています。


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2011年11月25日(金)

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