第1468回
自由資本主義と国家資本主義

20世紀後半、地球では
「資本主義と社会主義、どちらが正しい経済体制か?」
という壮大な実験が行われました。
資本主義は西側と呼ばれる国々、
社会主義は東側と呼ばれる国々で、
それぞれ自らの主張の正しさを証明するべく
経済運営が行われました。

この実験の結果、
「働いても働かなくても
給料が同じである社会主義国家では、
誰もまじめに働かないため経済が発展しない」
ということが分かり、
「資本主義の方が正しい経済体制である」
という結論が導き出されました。

しかし、21世紀に入って、
「市場原理の調整が働くため破綻することはない」
と考えられていた資本主義が、
2008年の世界金融危機の発生により、
いとも簡単に破綻してしまうことが分かりました。

このため「資本主義は正しい経済体制だが、
全く自由放任するのではなく、
国家がある程度介入する必要があるのではないか」と考え、
国家が資本主義に介入し管理する
国家資本主義を見直す人が増えてきました。

21世紀前半、地球では今度は
「自由資本主義と国家資本主義、どちらが正しい経済体制か?」
という2度目の壮大な実験が行われることになるのです。

現在、国家資本主義国家と呼ばれている国には、
中国、ロシア、ベトナム、シンガポールなどがありますが、
この顔ぶれを見る限り、
現時点では国家資本主義の方に分があるように思えます。
しかし、この壮大な実験の結果は、
2050年時点の両陣営の経済状態を見るまでは分かりません。
実際、国家資本主義国家・中国では、
国家資本主義の弊害が既に出始めています。

中国政府は昨年の第4四半期(2011年10−12月)から、
経済政策の軸足を
「インフレ抑制」から「成長確保」に移していますが、
それまで続けていたインフレ抑制政策の効果が
あまりにも強すぎて、その後遺症に苦しんでいます。

最も大きな影響を受けているのは不動産業界です。
インフレ抑制政策による金融引き締めや
不動産購入制限により、
現在中国では不動産取引が急減、
不動産価格も下落に転じています。
今後、不動産開発会社や不動産オーナーが資金繰りに困って、
低価格での投売りを始めれば、不動産バブルが崩壊し、
多額の不良債権を抱えた金融システムが
破綻してしまう可能性もあります。

また、金融引き締めと景気減速のダブルパンチで、
中小企業の経営環境も悪化しています。
今の状態が続くと、
中小企業の倒産、夜逃げ、労働争議などが増加し、
国内情勢を不安定化させる原因にもなりかねません。

「一放就乱、一収就死
(いーふぁんじょうるぁん、いーしょうじょうすー)」。
これが現在の中国経済を表す言葉です。

「ちょっと緩めればすぐに乱れ、ちょっと締めればすぐに死ぬ」。
市場原理の調整が効きづらく、
国家の政策一つでジェットコースターのように
暴騰したり暴落したりを繰り返す国家資本主義。

国家資本主義はこの欠点を克服して、
こちらの方が正しい資本主義であることを証明できるのか、
それとも、伝統的な資本主義である自由資本主義が
20世紀後半に続いて2連勝を収めるのか。

この2度目の壮大な実験の結果が出るのは、
今から38年後となります。





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2012年2月29日(水)

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