第1492回
支付宝で不払い問題の解決を

中国のインターネット大手・アリババは、
中国でネット販売を普及させるために、
様々な仕組みを生み出しましたが、
その中でも普及に最大の貢献を果たしたのは
支付宝(じふばお、アリペイ)の存在だと思います。

支付宝とは商品代金を一時的に預かる金融サービスです。
ネットでモノを買う人が、まずは支付宝に代金を預け、
お店から送られてきたモノが問題ないと確認した上で、
支付宝に支払いOKの連絡をすると、
支付宝からお店に代金が支払われます。

このサービスを使えば、
代金を支払わないお客もなくせますし、
送られてきたモノが不良品なのに、
既におカネを受け取ってしまったお店が
誠実に対応してくれない、などという
トラブルも避けることができます。

中国にはカネを払わない客と、
カネを受け取ると客に対する態度が豹変する店が
たくさんあります。
このため、従来は実店舗で動作確認をした上で、
その場でモノとカネを交換する必要があったのですが、
この支付宝の登場によって、
中国でもネット販売が可能となりました。

苛酷な環境はより良いモノやサービスを生む、と言いますが、
支付宝は日本よりはるかに劣悪な取引環境が生んだ、
非常に優秀なサービスと言えるのではないかと思います。

支付宝のおかげで不払いの問題が
ほとんどなくなった中国の対消費者取引ですが、
企業間取引においては、
以前よりはずっとましになったとは言え、
まだまだ不払いの問題は深刻です。
当社の引越子会社・外運華通にも、
一時期よりは減ったとは言え、
それでも支払い期限が過ぎているのに未回収の売掛金が
160万元(2,080万円)もあります。

こうした企業間取引の不払い問題も、
支付宝のシステムを利用すれば解決が可能かもしれません。

元々、企業間取引の中でも国際貿易の世界には、
L/C(信用状)という支付宝に似たシステムがありました。
まず、輸入者の取引銀行が輸出者に対してL/Cを開設する。
そして、輸出者は貨物の輸出後、
L/Cの条件に沿った船積書類を開設銀行に提示すれば、
輸入者の支払いに関係なく、
開設銀行から代金を支払ってもらえる、というシステムです。

開設銀行は輸入者の支払いを担保するため、
比較的高額なL/C開設手数料を徴収しますが、
それでもL/Cを開設することによって
輸出者に信用してもらい取引が成立するならば、
十分なメリットがあります。

今の支付宝をそのまま企業間取引にも利用する、
というのは難しいかもしれませんが、
L/Cのシステムを参考に改良した
「企業間取引版支付宝」を開発すれば、
中国ビジネス最大の障害である不払い問題も、
解決の方向に向かうのではないかと思います。





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2012年4月25日(水)

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