第1524回
中国不動産市場に回復の兆し

景気減速傾向が強まる中国。
中国政府は利下げなどで景気の下支えに必死ですが、
そんな中、中国の不動産市場に回復の兆しが出てきています。

不動産情報サイト・捜房網の調査によれば、
今年5月の不動産価格は調査対象40都市のうち、
34都市で不動産販売額が前月を上回ったのだそうです。
中でも広州の新築物件の販売は前月比52%も増加、
北京、成都、深センなどでも軒並み
前月比30%を超えたとのことです。

この景気減速局面で、
どうして不動産市場に回復の兆しが出ているのか?

それは、どうも中国の地方政府が、
中央の不動産価格抑制政策に従わず、
勝手に緩和政策を打ち出しているためらしいです。

中国の不動産価格は2007年までものすごい勢いで上昇しました。
2008年のリーマンショックの後、
株価は大幅に下落しましたが不動産価格は高止まりを続け、
金融危機後は中国政府の大規模な財政出動による
景気の下支えを背景とするインフレで、
不動産価格は再び上昇を始めました。

こうした不動産バブルに対し、
中国政府は不動産価格抑制政策を開始、
温家宝首相は「中国の不動産価格が合理的水準に落ち着くまで、
抑制の手は絶対に緩めない」という強い決意で
抑制政策を継続していました。

しかし、2011年後半以降、北京など30都市が、
住宅初回購入者を対象としたローン金利優遇や
税金、手数料の引き下げなど、不動産取引規制を緩和、
地方政府の裁量により、国家の不動産価格抑制政策が
実質骨抜きにされる状態となりました。
温家宝首相は今年3月、
不動産価格が高止まりしている現状について
「政策が中南海を出ない」と発言、
北京の中南海にある中央政府が政策を決定しても、
地方の党幹部にはその意図が浸透せず、
地元の金融業界、不動産業界とグルになって
政策を骨抜きにしてしまうことを嘆きました。

不動産価格の高騰でマイホームを買えない
一般庶民の怒りを和らげて、
国内情勢の安定を図りたい中央政府。
一方で、不動産価格を上昇させて、
公有地を少しでも高く売却し、
赤字の財政の穴埋めをしたい地方政府。

この中央と地方のねじれを解決するためには、
税収の割には負担が異常に重い、という
地方政府の財政問題を抜本的に解決する必要が
あるのではないかと思われます。


←前回記事へ

2012年7月11日(水)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ