第1525回
年金の受給開始年齢を引き上げる中国

社会保障制度を破綻させないために、
消費税の増税を決定した日本。

これは社会保障を受ける高齢者が増えるのに、
それを支える労働力人口は減少する、という
日本社会の構造的な問題が根底にあるのですが、
少子高齢化という点では、
今の日本のような状態になるのに、
まだ20-30年の余裕があるはずの中国においても、
社会保障費の増大は既に深刻な問題であるようです。

先日、日本の厚生労働省にあたる
中国政府の人力資源・社会保障部は、
国家が定めた年齢に基づく定年退職後に支払われる
養老年金の受給開始年齢を、
今後、弾力的に引き上げる方針を明らかにしました。

現在、中国の定年退職年齢は男性60歳、
女性の一般労働者50歳、
女性幹部職員は55歳と定められています。
定年退職後は養老年金が支払われますが、
中国政府は今後、この定年退職年齢と
養老年金の受給開始年齢を同時に、
弾力的に引き上げるものと思われます。

中国政府が今回、
こうした方針を発表した背景には、
平均寿命の延びなどにより、
過去に定めた年金制度の運用が
困難になってきていることがあります。

中国の65歳以上の高齢者比率は10%台前半と、
まだ日本の半分程度ですが、
中国が年金制度を始めた1951年当時の
平均寿命が40歳前後だったのに対し、
現在は74歳と60年で34年も延びて
先進国並みになっており、
当初の年金制度設計の前提が
狂ってきてしまっているのでしょう。

しかし、逆に考えれば、
平均寿命が昔と比べて延びてきているのに、
定年退職の年齢だけが昔のまま、
というのもおかしな話です。
男性60歳、女性一般労働者に至っては50歳で
「強制的に」引退させられてしまっては、
まだまだ仕事をする気力も体力も
残っている人たちにとっては、
つまらないことこの上ありません。

当社では最近、徐中興さんという
国有企業を定年退職した60歳台の男性に、
物流顧問として来て頂くことになりました。

徐さんの物流に関する知識は非常に豊富で、
さらに、最新の情報を入手するために
毎日、精力的に動いて頂いています。
徐さんは既に養老年金をもらっていますので、
一日中、公園のベンチに座って
日向ぼっこをしていても生活には困らない身分なのですが、
ご本人はおカネではなく、
社会のために役に立っているという
生きがいを感じるために働いているようです。

中国も日本も年金原資の捻出に四苦八苦していますが、
定年退職年齢や年金の受給開始年齢を引き上げるのではなく、
いっそのこと定年退職などという制度は廃止して、
生きがいのために働きたい老人が
何歳になっても働ける環境を整えることが、
ひいては社会保障費用の低減につながるのではないか、
と私は思います。


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2012年7月13日(金)

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