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48. 違いのわかる男〜内容編〜

私なりに中国で人財を育てるのに必要なものとは?
という問いの答えの1つは、
「違いのわかる男になる」ことだとご紹介しました。
つまり、日本人には想像のつかない
ちょっと変わった中国人の思考パターンや行動、
まあ簡単にいうと人間を理解する必要があるという意味です。

この中国人と日本人の違いを
最初に考えるきっかけを作ってくれたのは、
邱永漢グループの私の先輩であり、かつ、
「卒業のない邱永漢学校」の著者でもある荒木さんでした。

彼から教わったエピソードを2つほど紹介すると・・・。

1)ありえないコスト削減方法
彼は、成都に赴任した当初、
一時期とあるレストランを兼務していたことがあります。
そのレストランは赤字続きで、
なかでもレストランの3大原価である食品原価、人件費、
家賃のうちとくに食品原価が高すぎることに着目し、
当時の部下だったマネージャーに「食品原価を下げなさい」
という指示を出したとか。

すると次の週から見る見る原価が下がり、
そのたびにそのマネージャーが荒木さんの部屋をのぞきに来ては
「また下がりました。」という報告をするのでした。

そもそも、レストランにおいて食品原価を劇的に下げることなど
それほど簡単でないことは小学生でもわかることですが、
あまりの激しい原価の下がり方に「おかしい!?」
と感じた荒木さんが現場を見に行ってみるとなんと・・・。

そこはビュッフェスタイルのレストランだったのですが、
現場はひどい状況で原価の高い肉類がほとんどおいてない状態。
マネジャーに聞いてみると、
次は、原価の高い飲料であるビールも出さない予定だとか。
「そりゃ〜下がるわな・・・。」と肩を落としたとか。

2)メシは食わしたのか?
場所は同じくビュッフェスタイルのレストラン。
とある日、突然消防局のお偉いさんが店舗の検査にやってきて、
「あそこがだめ、ここがだめ。」
と次々と難癖をつけ始めたそうです。

それに対して、いちいち正当な理由説明を行い、
なんとか罰則と罰金を受けないように努力したものの、
お偉いさんの表情はけわしくなるばかり。

中国に赴任したばかりだった荒木さんは、
通訳を引き連れて青い顔をしながら
現地で経験の長いボスに説明に行ったそうです。
そのボスは一通り説明を聞くと、
落ち着いた様子で一言質問をしたそうです。
「でその人は何時ごろに来たの?」

荒木さんは質問の意図が良くわからず、
しかし、質問に答える形で
「だいたい11:50ごろですが。」
と答えると、そのボスは

「で、その人にメシ(お昼ご飯)は食わせたのか?」

と言ったそうです。

指摘された消火器の位置や、
安全通路の確保のために
どれだけお金がかかるかに頭を悩ませていた彼の前に、
「メシは食わせたのか?」
という質問はショッキングだったようで、
「いや〜、俺にはそういう考え方はできなかった。」
と後日私に語ったのです。

そのほかこの手の話には事欠かないのですが、
こういった個別事例を紹介したいのではなく、
わたしが言いたいことは、
日本では考えたこともないような頭の使い方や物の見方をしないと
人の管理などまったくできませんよ、ということです。

日本には、知識が氾濫していて、
「ハーバード式人材教育法」等のかっこいい文献もたくさんありますし、
事実私もそういったものは、もう読みきれないほど読んできました。

しかし、そのどこにも、
上にあげたよう中国人の行動様式や
思考パターンに基づいてかかれたものはなかったのです。

日本人が中国に来て、中国の人財を育て上げようとする場合、
ハーバード式を勉強するよりも、
われわれが実際に現地で学ぶ邱永漢式方法で
「違いのわかる男になる」必要がどうしてもあるのです。


2008年2月18日(月) <<前へ  次へ>>