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98.貧乏から学んだプロフェッショナリズム

自分の貧乏ばなしを書いているときに、昔のことを思い出しました。

当時3000円しかなかったと申し上げましたが、
実家暮らしでしたので、
ひとまず食べるものと眠るところはありましたが、
それだけでは困りますので、アルバイトをすることにしました。

思いついた場所は二箇所で、一箇所は「引越しのサカイ」で
もう一箇所は人材派遣の「パソナ」でした。

何か特別な理由があったからではありません。
お金がなくて働くとなるとなぜだか引越しを連想してしまって。
まあ、大学の体育会出身ですから体には自信がありましたが。

引越しのサカイに履歴書を持っていくと、
金子さんという人が私を迎えてくれました。

金子さんは不思議そう〜に私の履歴書を眺め、
いくつか質問をしました。

「あの、キムさん、大学院出てるの?」
「はい。」
「英語もしゃべれるの?」
「はい。」
「・・・。うちに大学院出身の人は来たことないんだけど、
なんでうちで働くの?」

まだ社会的にフリーターといった言葉がない状況でしたから、
どうにも納得のいかない様子でしたが、
まあ、私はお金に困っているわけで、
それで、引越しか思いつかなかった、
と正直に申し上げ、採用となりました。

ご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、
引越しの仕事はかなりキツイ仕事です。
また、わけありの方も多く、かなり荒っぽい職場でした。

最初についたのが、ベテランの加藤さんでした。

もう、時代錯誤も甚だしいパンチパーマに、
色つきメガネの最高に怖そうな人でした。
その人に、一日何十回も怒鳴られるし、
おまけに、加藤さんのアシスタントについていた、
職場では私の先輩にあたる18歳の金髪のお兄ちゃんには
えらくでかい顔をされて、
「おいキム、毛布もってこい。ロープもってこい。」
だのと、散々えばられたのでした。

最初はかなり抵抗があったこの仕事ですが、よく観察すると、
仕事の進め方、段取りは非常に高い合理性が求められ、
例えば、トラックに荷をつめていく作業などは、

・トラックの大きさ
・当日の朝、2〜3分で観察する引越し元の家の状況
・各荷の大きさ、形状
・通路の広さ等々

から、当日のスタッフに運び出す順序等を説明する姿を見て、
「いや、これは本当のプロの仕事だな。」
と尊敬の念を抱いたのでした。

こうなってくるとがぜん仕事は面白く、
半年ほどサカイさんではお世話になりました。

ちなみに、パソナさんから紹介してもらった仕事は、
たった一回でしたが、
一日中美人の・・・マネキンを運び続けるという仕事でした。

引越しのサカイで学んだプロ魂を発揮し、
熱心にマネキンを運んでいると、
そのパソナの事務所の一番偉い方に、

「いや〜、キムさんのマネキンの運び方は素晴らしい!」

と最高の賞賛をいただき、
喜んでいいのかどうか、複雑な心境でした。

何が言いたかったかというと、
どんな仕事にもやはり
プロ魂=プロフェッショナリズムというものがあるということです。
その仕事にやりがいを見つけられるかどうかは、
自分がその仕事の中に何を観察し、何を学び成長するか、
という心持だけです。

特に日本人のプロ魂は世界に誇るものがあり、
これこそが、「日本人にしかできないことをやれ。」
というテーマに通じるものだと思います。

ところで、その引越しのサカイの加藤さんには、
ずいぶんとつらい目にあわされたのですが、
最後には、とても可愛がってもらいました。

次回はこの経験から、
「上を目指すならまず最高の部下たれ」
という話をしたいと思います。


2009年2月2日(月)

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