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9.農薬を使わないコーヒー栽培をめざして
亜熱帯気候に属する私たちの農園では、
年中、虫と病気と雑草の問題が発生します。
この問題、もちろん私たちの農園だけのことではありません。
地域全体の大きな問題なのです。
皆さまもご存知のとおり、中国の農薬の問題は深刻です。

効き目の強い農薬ほど安く手に入ります。
逆に、人への害が少ないよう研究開発された農薬ほど、高く売られ、
病害虫に対する効き目は弱いのです。
現金収入の少ない生産者達は、
数元で買える安くて効き目の強い農薬を使用します。
生産者の中には、読み書きができない人も多く、
強い農薬を正しい使い方を理解しないまま
使用していることがほとんどです。
他の農場の現場を見ると、農作物と作業する人の人体への安全性に
疑問をもたざるをえません。

そんな中、私たちの農園では、
化学農薬を一切使わないことを大前提に、
病害虫と雑草の防除をしています。

基本は、病害虫に強いコーヒーの木づくりと木を支える土作り。
そして、害虫と天敵が共存できる生態系の環境を作ります。
つまり人間の体に例えると、常在菌を殺さずバランスを保ちながら、
薬の力に頼らず体力をつけて
免疫力を高める作業を畑で実行することです。
それでも、多くの種類の病害虫が発生します。

害虫が発生すると、家庭の釜戸から出る灰を手にいっぱいつけ、
虫を窒息か押しつぶして、殺していきます。
人手と根気が必要なこの作業は、
一本一本の木の健康状態を確認することになります。
農園で働く苗族のスタッフは手先が器用で、
この根気の要る作業を淡々とやりとげてくれるのです。

病気に対しては、コーヒーのパーチメント
(加工の時に出る副産物)で炭を作ったときに煙からできる
「お酢」を使います。
数百倍に薄めたこのお酢を撒く事は、病気の予防や治療だけでなく、
お酢の中に含まれるアミノ酸によって、
木が生き生きと活性化させる作用があります。

お酢を使うこの技術、
日本の有機農法ではよく知られた技術なのですが、
当初、農場のスタッフはこのやり方を
誰も信じてくれようとはしませんでした。
作業をしながらも、「この化学農薬はよく効くよ!」と、
小瓶を持ち込んで薦めてくるのです。
ところが数週間後、元気を取り戻した木を目の当たりにして
「病気は俺が治してたんだ!」
と誇らしげに仲間に伝える姿がありました。

農業の一つ一つの技術は小さなものですが、
未知の技術の経験を通してスタッフの意識が変わり、
意欲に繋がることは大きな収穫です。
雲南の山奥の小数民族の村から中国の農薬問題の改善の一歩を
アピールする可能性をも秘めています。


2010年2月3日(水)

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