さて、新居ができたので、新居祝いに友人を招待することになった。友人といっても、私の友人には、実業界の人もあれば、文人墨客もある。かと思えば、俳優さんから歌手からカメラマン、画家、さらには『話の特集』の常連になった「トランプの王様」のようないでたちをした異人種もいる。それらの人々をどういう具合に分けたらよいかわからないが、私は「堅気」と「ヤクザ」な商売、だいたい同じことだが「経済観念のある人」と「ない人」に大別して、二回に分けることにした。とはいっても、ヤクザな商売に従事している人でも、マトモな人もあるし、堅気の商売の人で、ヤクザな商売の人とつきあいたいという人もある。
そこで四月三十日にまずヤクザな方から先に招待した。その日の出席者を見ると、石坂浩二、加賀まり子、永六輔、高橋睦郎、八木正生、黛敏郎、山下勇三、和田誠、植草基一、安井かずみ、中村博之、K・サンダーズ、山本直純・正美夫妻、西郷輝彦、真家宏満、藤家虹二、藤田敏雄、宝官正章、荒木一郎、早崎治、立木義浩、コシノ・ジュンコ、クロイワ・カズ、矢崎泰久、与謝野馨らの名がある。その中にまじって、ややOBの観のあるのが小谷正一、中村武志、デザイナーの小林秀夫、一枚の絵社長の竹田厳道夫妻であった。
また五月三日には堅気の人たちにおいでいただいたが、そのなかには佐藤春夫夫人の千代さん、彫刻家の向井良吉、小山いと子、安岡章太郎夫妻、青井忠雄、片山龍二、嶋中鵬二夫妻、東映専務坪井與、高島陽らのさほど堅気とも思えない人たちの顔もまじっている。
そうしたさほど堅気でもない人々の中で、出色はなんといっても森茉莉さんであろう。茉莉さんは、もうずいぶん昔から風貌だけ見ると、箒にのった魔法使いのおバアさんのような感じだが、一歩心の中に踏み込むと、十六歳で年をとることをやめた少女みたいな人で、うちのまだ高校に行っていた娘と一番話が合い、
「ね、ね、サイパンさん。あなた、路線ない?」
「路線ってなあに?」
「マニファナっていつも新聞にのっているでしょう。私、あれが飲みたくてたまらないの」
といったかと思えば、
「ね、ね、あなた、自分のお父さんに恋したことない?」
「いいえ」
「私ね、うちの十六歳の息子に再会したとき、いっぺんで恋してしまったの。でもしばらくしたら、すぐに恋がさめてしまったけれどね」
千客万来というけれど、うちのお客ほど変わり種の揃ったのはいないのではないか。

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