パリだけがフランスではありません

第52回
稲作文化と小麦文化の違い?

第46回(5月2日)で「モルビアン湾のお祭り」を紹介しましたが、
それについて読者の女性からメールをいただきました。

彼女がお嫁にいらした先は、
昔からの「村祭り」を大切に保存している土地だそうです。
しかし祭りの仕切りは代々の住民の受持ちで、
新たに移り住んだ人との壁を微妙に感じるとか。
そこでフランス、このモルビアンではどうですか。
またフランス人の土地への愛着、故郷への帰属意識など、
日本人の土地への愛着と似ていませんか、というご質問でした。

まず「祭り」ですが、フランス語だと「フェトfete」になります。
祝祭日(宗教的な日を含む)、祝宴、
さらに陽気とか楽しみ、喜びといった意味もあります。
つまり「みんなで陽気に楽しむ日」といえるでしょうか。

フランスのフェトは
宗教(ここではカトリックですが)に根ざした祭りと、
土地の文化に根ざした祭りがあると思います。
前者はその地域の教会と信者が中心になって行ないます。
後者はより観光的で開放的といえます。

さて核心ですが、
フランスは今でも食糧自給が可能な数少ない農業国でもあります。
土地への愛着、故郷への帰属意識は、
ある意味日本人よりずっと強いものを持っているかもしれません。
ただ町や村というより、
どの人もそれが含まれる自分が生まれた地方、
地域の「文化」を誇りにしています。

たとえばブルターニュ地方や
スペインとの国境に近いバスク地方など、
今も地方独特の言語を大切にしています。
さらにフランス各地で、
自分のところがそれぞれ最高と思っている節もあります。
パリの人はその典型です。
南フランスだって、マルセイユ、サン・トロペ、ニースと
それぞれ他とは違うと自負しているはずです。

ただ日本と違うのは「代々」というこだわりが少ない。
別のところから移り住んだ人でも
その土地の旧住民と文化に敬意と興味を持って接していれば、
時間の経過と共にいつの間にか「そこの人」になっている点です。
また「そこの人」になりたくなければ
深く関わらない自由もあります。

稲作文化と小麦文化の違い、と表現できないでしょうか。
田んぼはそう簡単にあちこちすぐ作れないし、
伝統的に「村」単位の作業だったのでは。
一方土地さえ良ければどこでも耕して小麦畑にでき、
作業は家族中心のフランス。
土地との関わりは日本より流動的で、
「村」の繋がりも日本よりは希薄…
さらにモルビアンは大きな湾に面しています。
海という開かれた窓があるぶん、
内陸より解放された気質があるのは確かです。

一つ「祭り」という言葉からもいろいろな違いが見えてくるようです。


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2005年5月16日(月)

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