第177回
猪瀬直樹さんの新しい「東京論」「日本論」
東京都副知事・作家の猪瀬直樹さんによる
新刊新書「東京の副知事になってみたら」が
送られてきました。
自らを変な作家と自称しつつも、
石原慎太郎都知事の信任を受けて3年。
初めて明かす、混迷政官界の内幕ドキュメンタリーの秀作です。
あるときは、「緑の募金キャンペーンに日曜出勤する
都職員の手当1,000円」に怒り、
あるときは「高速道路無料化のツケは
国民全体の税負担になる」と叱る――
そして、この3年、
次々と猪瀬さんが立ち上げた
「都市生活改革のプロジェクトチーム」とは、
これまでの政官界の常識を覆す、
まさに“役人たちの腰を抜かす”ものばかりだったようです。
とくに、高齢少子化社会を長期戦略に入れた
きめの細かい「いのちのプロジェクト」群に、僕は感心しました。
たとえば、「周産期(出産前後)医療体制整備プロジェクト」
(NICU=未熟児用保育器を備えた病床の増設)――、
「少子高齢時代にふさわしい
新たな『すまい』実現プロジェクト」
(4人に1人が75歳以上の高齢者時代に対応の
「ケア付き賃貸住宅」「シルバー交番」などの推進)――、
をあなたは知っていましたか?
後者の「すまいプロジェクト」からは、
「5,000億円」の経済効果も生まれるとまで試算されています。
かつて、猪瀬さんは
「道路公団民営化改革」で勇名をはせましたが
こんどはその稀有な行動力で、
「医療」「すまい」の改革はもちろん、
「水道」「空港」「エコ」の技術輸出による景気浮揚という
「首都再生」、いや「日本蘇生」「経済浮揚」させるための
「東京モデル」を次々と実行に移していったようなのです。
「突貫小僧=作家・猪瀬直樹さん」の行動力のスタンスが
独特の時代予見のキーワードと共に、次々に明かされるところが
この新刊を一層面白くさせていると思います。
●「民主政権だけでなく、
永田町はバラマキのポピュリズムに走りすぎる」
●「政策モデルは東京都で作るしかないのかな。(略)
小泉首相の手伝いを5年やって、
今度は石原知事の手伝いを3年やってみたが、
作家の直感と分析力で少しは国民、都民のためも
仕事ができたと思う」
●「このごろの政治家の言葉が軽い。
政治家だけではない。
一国の運命を決める場面で、
国民一人一人が短い報告ひとつに
どれほど真剣に向き合ったか。
いま欠けているのはそのリアリズムではないかと思う」
そして「あとがき」に
「本書を、新しい東京論、日本論として
受け止めてもらえばありがたい。
週刊ポストに『ミカドの肖像』を連載したのは1985年だが
それ以来、一貫して抱きつづけたテーマを政策という
新しい角度から描いてみた」と、結んでいます。
この混迷不安が錯綜し、
多くの国民が自信を失っている時代だからこそ読むべき、
リアリティと希望が溢れる一冊です。
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