ガンを切らずに10年延命-関根 進

再開!元週刊ポスト編集長の目からウロコの体験秘話!

第206回
秋葉原→アキバ→AKIHABARA→秋叶原

人それぞれに、トキメクばかりの
「いのちのエネルギー」が問われている時代ですが、
それ以上に求められているのが、
人が作る企業や地域といった
「場」のパワー・アップでしょう。

そんなことを考えているときに、
僕の知り合いの若き編集者のNさんから
「秋葉原は今」(芸術新聞社)という、
330頁の分厚い新刊が送られてきました。

いま異色の最先端技術都市として、
世界から注目される秋葉原の都市再開発の戦後史を
現場の都市デザインナーの視点から
総括した決定版検証本の大著です。

筆者は、三宅理一さんという工学博士。
芝浦工業大学、リエージュ大学、慶應義塾大学、
パリ国立工芸院で教鞭をとり、現在、藤女子大学教授。
建築史、地域計画、デザイン理論の権威です。

実際に、2004年から秋葉原再開発協議会顧問に就き、
D―秋葉原実行委員会委員長を務めたといいますから、
なぜ、秋葉原は他のどことも違う街になったのか?
なぜ、人を惹きつける「悪魔的な魅力」を秘めるのか?
創造技術デザイン都市&情報発信都市として、
秋葉原に未来あるのか?――
バラ色の未来デザイン構想のみならず、
国、東京都、大企業、量販店と地元の家電店との軋轢、
つまり、「大秋葉原パワー」と「小秋葉原パワー」の綱引き、
そして、家電の街、パソコンの街そしてオタクの街と、
街の顔が錯綜する「戦後の闇市的エネルギー」の混沌の実相が
ものの見事に洗い出されています。

「秋葉原とは巨象のような存在である。(略)
電気電子の商店主たち(略) 通を自称するマニアたち、
江戸っ子の血をひく地域住民、全国から集まるオタク層(略)
といった異なった人種が秋葉原に共存し、
同床異夢の状態にあるといってよい。(略)
その混沌としたエネルギーが秋葉原の魅力でもあったが、(略)
再開発という機会を通して(略)
新たな知見が次々と生み出されてきたのは事実である」と。

たんなる綺麗ごとの都市再開発論ではなく、
これからの日本技術立国の現実的な未来予見書としても、
興味深い内容ですから、
夏休みにでもじっくりと読んでみてください。

圧巻は、世界の秋葉原が、
「家電、量販店、ゲーム、パソコン、ITセンター、
オタク、萌え、フィギュア、新線開通、超高層ビル・・・」
と錯綜・変貌を遂げる中で、
もうひとつ加わった強烈なパワーが
「外国人観光客と中国資本」だと指摘している個所でしょう。

2009年、秋葉原の地元有力ブランド「ラオックス」が、
中国の量販店・蘇寧電器に買収された事例に
言及して、次のように示唆しています。

「中国側には周到な戦略がある。(略)
日本製品を秋葉原ブランドとして売り出せば必ず売れる(略)
日本の企業はそのことに気がつかず(略)
販売経路を作り上げてこなかった。
今や資金力では引けを取らない中国企業が、
リスクを承知で、日本に乗り込んできたわけである」と。

≪秋葉原→アキバ→AKIHABARA→秋叶原≫
と呼称までも変転する様を読んでいくと、
不況脱出、元気回復!
これからの日本と日本人の
「生き残り」のヒントが見つかるはずです。


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2010年7月25日(日)

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