誰が日本をダメにした?
フリージャーナリストの嶋中労さんの「オトナとはかくあるべし論」

第25回
みんなで自衛すれば怖くない?

日頃、「若い人、大っきらい」と公言しているくらいだから、
「バラ色の青春」などという言葉を聞いただけで
反吐が出そうになる。
バラ色だろうと灰色だろうと、
青春なんてものには一片の価値もありはしない。
もちろん私のろくでもない青春など
とっくの昔にドブに捨ててしまった。
今でも、あの頃の気障なかっこうや不遜な言を思い出すたびに、
恥ずかしさのあまり絶叫したくなってしまう。

しかし、この頃つくづく思うのだ。
恥多き青春には未練はないが、
あの肉体の若さだけは取り戻したいと。
五十路の身で体力増強を図っても限界がある。
昔のようには走れないし、
エネルギーが充電されるまでに時間がかかりすぎる。
身体だって固くなっていて、瞬発力も目に見えて落ちた。
曲がりなりにもヨン様みたいな肉体を誇ってはいるが、
内実は張り子の虎なのである。

私は表向きは「健康のためです」などといって、
水泳やジョギングに励んでいるが、別の目的もある。
戦闘能力の維持だ。
戦闘などというと大仰に聞こえるだろうが、
平たくいってしまうと不測の事態が起きたときに
身体が思うように動くか、ということだ。
友人がおやじ狩りに遭った話は以前紹介したが、
対岸の火事と等閑視することはできない。
いつ自分が狩りの対象になるやも知れず、
街には物騒な連中がウヨウヨしている。

通り魔事件や子供の誘拐殺人事件などが頻発すると、
結局、自分の命は自分で守るという結論に落ち着く。
いつだったか、渋谷の防犯グッズの店に
娘用の防犯ブザーを買いに行ったことがある。
店内は若い男の客であふれ、
彼らは揃ってコンバット・ナイフにご執心のようすであった。
「防犯用にナイフを売るの?」
と店主に聞いたら、
「はい、でも自衛用ですから……」
とあっけらかんとした答え。
当節は自衛用と称して、
懐にナイフを隠し持つのが流行りらしい。

以前、図書館の中でバカ騒ぎをしていた中学生をきつく叱ったら、
言うことを聞くどころか腰を低くし、
威嚇するような目つきで右ポケットに手を突っ込んだ。
いざとなったら、「何か」を抜くぞというポーズである。
あれはナイフだったのかも知れぬ。
自衛用ナイフに対抗できる自衛用グッズって、
いったい何なんだ?


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