誰が日本をダメにした?
フリージャーナリストの嶋中労さんの「オトナとはかくあるべし論」

第80回
下位者のディスプレイ

TVニュースなどを見ていると、
外国の要人に謁見する日本の政治家たちは、
わずかな例外を除いて、みな握手しながらお辞儀をしている。
あの姿はみっともない。
中国人などは、
対中ODA(政府開発援助)なんか
一文もいただいておりませんよ、
という顔をして悠然と胸を張っている。
いかにも旦那然としているものだから、
ぺこぺこと頭を下げているこっちのほうが、
どうかすると中国から施し物を受けているような印象すら受ける。

中国の北方や東方には、かつて多くの周辺民族が割拠していたが、
中国の諸王朝は自らの権威を高めるため、
新興の周辺国家と盛んに「朝貢」の関係を結んだ。
その長き朝貢の歴史の名残なのか、
日本の政治家たちはいかにも
貢ぎ物持参の使節団のような印象で、
堂々と接見し、宗主国みたいにふるまっている中国人のほうが、
はるかに位が高そうに見えるのである。

欧米的な慣習では、
頭を下げることは下位者のディスプレイになるのだという。
猿でいうならマウンティングされる側になったに等しい。
つまり階層の下の者が上位の者に尻を突き出し
服従の意を示したことになる。
いくらお辞儀の文化を持つからといって、
握手しているときに頭を下げることはない。
別段ふんぞり返る必要などないが、
相手に優位な感情をもたせてやる必要もない。
外交の場では、国際慣例に従い、
ごくふつうに挨拶してくれればいいのだ。
そのほうが美しいし、凛としている。

この頃思うのだが、
赤べこ人形みたいに、しゃべりながら首を前後に振る
日本人が増えてきたような気がする。
特にTVニュースか何かの街頭インタビューで、
この症状を発症する人が多いのだが、
あれはいったい何という病気なのだろう。
自分の言っていることに相手が同意してくれる前に、
「うん、そうそう」と自分で納得してしまっているような、
あるいは相手にわが意見に同意しろとしきりに促しているような、
そんなサインのようにも思えるのである。
いずれにしろ鳩が餌をついばんでいるような、
ひょこひょことせわしない首の動きは、
決して見栄えのよいものではない。
この動きも下位者のディスプレイみたいで、
どこか卑屈に映るのである。

美しいか、美しくないか――
私の唯一の行動原理は、単純そのものだ。
単純でいいのだと思っている。


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