第16回
プレイバック・パートII
街に音楽がなくなった。
世代を超えて口ずさむ歌がないのです。
私が幼かった頃、山口百恵さんの歌をよく口ずさんでいました。
大人になったら
女性はみなあのような恋愛をするのだと信じていました。
「かっこいいな。
真っ赤なポルシェなんかに乗って、
男性とあんな風にやりとりするなんて」
10歳そこそこの片田舎の少女が想像力を膨らまし、
早く大人になってみたいなとも考えていました。
沢田研二さんの「勝手にしやがれ」の女性像も似ています。
ジュリーのようなかっこいい男性をふる、女性。
女性の心意気というか、女っぷりが素敵。
「もう、あなたのことを必要としないのよ」
という様子がひしひしと伝わってきます。
その頃大人だった人達は
百恵さんやジュリーの歌に何を見つけていたのでしょうか。
きっと新しい女性像。
男性を待ってばかりの演歌から、
女性が主導権を持つようなかっこいい恋愛がしたい。
つっぱりや不良ではない、いい女。
美意識の変化でもありますね。
実際の恋愛や結婚生活では歌詞のように
かっこいいことは起こりません。
ポルシェに乗ることのできる男性もあまりいません。
実際には起こらないけれど、虚像の中の遊びは
少女を大人の女性に一歩近づけます。
そして、大人の女性を
本物の女性にすることもあるかもしれません。
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