第55回
素人と玄人の間
「素人が自分で髪を染めるとこんな風になるんです」
と先日、私は美容員さんに注意されました。
玄人であるプロから見て、
髪の毛の色がかなりまだらになっていたらしいのです。
髪の毛は根元から生えるので、
根元と毛先は自ずと色が変わってきてしまいます。
美容院に行く時間が無かったので、
市販の染色剤で根元を2回染めた結果、
「素人が、勝手に色を染めると、髪は痛むわ、
色むらはできるわ、良いことは何もありません」
と言われてしまったのです。
美容員さんが「素人」と言う単語を2度も使ったので、
「素人」という言葉の意味を考えてしまいました。
確かに、私は髪のことについて、何も知りません。
美容関係の仕事に就いたことはありませんし、
いつも輝く髪を維持している訳でもありません。
だから、「素人」に違いありません。
一体全体、素人と玄人の境界線はあるのでしょうか、
あるとすれば、どの位の距離なのでしょうか。
私は今音楽を学習しています。
そこでも、素人と玄人の違いについて考えます。
「千里の道も一歩から」ということわざがありますが、
玄人(プロ)の境界線を千里の半分の五百里とします。
素人(アマチュア)は、その一歩を踏み出す場所にいると
考えて良いでしょう。
では、三百里、四百里などの場所に居る人はどうなのでしょうか。
同じく、「素人」です。五百里に届いていないのですから。
だいたい、人のことを「素人」と馬鹿にする人は
大抵この辺りの知識しか持っていないことが多いように感じます。
たとえ、五百里に届いたからといって、
学習が終わるわけではありません。
世界的な水準で仕事をしている人は、
九百里位のところにいるとして、
そこに至るまでの道のりの苦しさ、喜びの全てを
味わい尽くしていますので、
人のことを馬鹿にする気持ちは何処かに吹っ飛んでいます。
それより、千里に近づくために、毎日自己鍛錬をしています。
その努力たるや、凡人に真似のできるものではありません。
女性でも、プロの女優さんやモデルさんは
五百里の所にいる人といってもよいでしょう。
雑誌などからも彼女達のプロ意識には関心させられます。
私は、もちろん彼女達からは遠い「素人」です。
だから、千里の道も一歩からで、
彼女達に少しでも近づくために、
毎日一歩一歩確実に歩んでゆくしかないと思っています。
たとえ、一生かけて百里に届かなかったとしても、
先行く人の後を追いかけて行く他はないのです。
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