第54回
なんちゃって、吉永小百合さん
最近母はよく、
「私も女優さんのように
週2回ぐらいエステに行ってみたい」
と言うようになりました。
私はエステに一度も行ったことがないので、
アドバイスができません。
母の話をよく聞いてみると、
「週2回エステに行くと
自分は吉永小百合さんのようになれるかもしれない」
と思っているように感じます。
私の母は若い頃に小百合さんに似ていると
人から言われたことがあり、
それを半世紀近くたっても忘れられず、
雑誌に載っている彼女の写真と
現在の自分の姿を知って、がっかりしているのです。
歳をとって、食べる量も減ったので、
私が幼い頃よりも家計が少しは楽になったのでしょうか、
以前では買うことのできなかった高額の化粧品を
買うことができるようになりました。
美容にも母なりに気を使っている様子です。
けれど、エステに通うのは高値の花です。
母にしてみれば、吉永小百合さんに近づくための
最後の手段なのです。
かといって、実際に小百合さんがエステに行っているか
どうかというのは、わかりません。
母の自己満足の可能性は充分ありますが、
エステには女性の憧れが詰まっているように感じます。
訪問販売を主体とした化粧品会社は
2千円前後でエステが受けられるようにしています。
けれど、主目的は自社製品を
買ってもらうことですから、
その会社の製品に興味のない人は
警戒するのではないでしょうか。
今東京では、千円カットの店が流行っています。
同じようなコンセプトでエステのお店があったら、
エステを受ける人も増えそうです。
セルフエステではなく、
短時間で人の手でエステが受けられたら、
裾野が広がると思いませんか。
美容院に行くのと同じ感覚で、
日本の女性がエステに行く日が来たら、
「なんちゃって、吉永小百合さん」
が増えるのかもしれません。
時代は化粧品から、エステへと変わる予感がします。
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