二度目のお見合い、物議をかもした贈物

やっぱり年頃だったのであろう。しばらくすると、阿二姐がまた別の話を持ってきてくれた。
今度は、もと居候をしていた廖文毅邸のすぐお隣りの潘(はん)家の三姑娘(サムクウリヨン・三番目のお嬢さん)だと言う。隣家に娘が何人もいることは私も知っていたが、いつも家の前にサンビーム・タルバットの素敵な車が停まっていたことと、娘たちが出てくる時は一分隊くらいゾロゾロ歩いているので、誰が誰だかさっぱり見当がつかなかった。簡君にその話をすると、
「あの家の娘なら悪くはないぞ。何番目の娘だい?」
とききかえされた。
「三姑娘というから、三番目の娘だろう」
「三番目よりは四番目のほうが美人だよ。でも三番目も悪いことはない。顔にニキビがあるけれど」
犬を連れて散歩していても、観察するものはちゃんと観察しているものだなと感心してしまった。
「でもいつまでも香港に住んでいるつもりはないからなあ」
とまたしても私が渋ると、
「見るだけなら只だよ。気に入ったら一緒になればいいし、気に入らなければ、それまでのことじゃないか」
こちらはこちらで勝手なことを言っていたが、向うでもお隣りに住んでいた青年ってどんな人だろう、と話題になった。
「いつも犬を連れて歩いている人がいたけれど、あの人なら要らないわ」
と三姑娘は言った。
「いいえ、犬を連れて歩いていた人じゃなくて、部屋の中で毛糸を編んでいた人ですよ」
と三姑娘の叔母が脇から口を出した。
その人なら会ったことがないから、会ってみようかということになった。
「気軽な気持で来てください」と言われたけれども、目的が目的だけに自分一人で押しかけて行くだけの勇気がなかった。阿二姐がまた一走りして、結局、この前、幼稚園の先生を紹介してくれた趙太太が同行してくれることになった。
廖博士の隣家の前は廖家に居候をしていた頃、毎日のように通ったが、中に入ったことはなかった。門に鉄柵があっていつも閉めきっている。鉄柵の中には図体の大きな犬がいて、人の気配がすると猛烈に吠えた。私は犬嫌いで、金持の邸の犬には特に憎しみを感じていた。しかし、考えてみると、この家で私が知っているのはこの番犬だけだった。

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