中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第84回
明時代の幕開け「洪武」

いよいよ、
本流の中国古陶磁器解説の方は明時代に突入してしまいました。

書くネタも残りあと僅かになってきましたので、
一回一回、噛みしめるように読んで下さい。

モンゴル民族による元を倒し、
漢民族による明王朝を作ったのは
あの有名な「朱元璋」(しゅげんしょう)です。

朱元璋は元の末期、紅巾の乱で頭角を現しました。
当時の中国は元の乱政と大凶作による飢饉により、
飢え苦しむ人々が溢れかえっていました。
そういう状況を打破しようと
白蓮教の教徒たちが「元王朝打倒」
「漢民族による楽園の建国」を目標に掲げて立ち上がりました。

それに農民なども加勢し大きな反乱となったのが、紅巾の乱です。
その歴史的な動乱期の中、権力を握ったのが
朱元璋でした。
朱元璋は1368年明王朝の成立とともに「洪武帝」を名乗り、
皇帝の座につきます。

「洪武帝」について良く語られるのは
その残虐性と荒々しい独裁者といった側面です。

特に「文字の獄」と呼ばれる大弾圧は有名です。
元僧侶であった洪武帝は、
僧侶をイメージする「光」「禿」「僧」などの字を使った者を
即死刑にするという恐ろしい政治を行いました。

どの時代でも同じですが、
開祖の頃は「圧政」「弾圧」「暴君」といった単語が良く似合う
独裁者が登場いたします。
そういう人でなければ、
決して時代を変えられないという事でしょう。

そんな明の洪武時代の陶磁器ですが、
もちろんこんな動乱の時代に
陶磁器など文化的なものが持て囃される事なんてありません。

陶磁器的には元の流れをそのまま引き継ぎます。
しかし元時代には西アジアから簡単に輸入できた
青い色の呈色剤である「コバルト」の入手が困難になり、
仕方なく国産のコバルトを使用して
白地に青色の磁器「青花磁器」を製造する事になります。

しかしその磁器は、
元時代に製造された真っ白な素地に真っ青な文様が描かれた
素晴らしく美しい「青花磁器」の発色とはうって変わった
どす黒く見栄えのしないものとなりました。

それで仕方なく、どす黒い国産コバルト以外で
何かキレイな焼物が焼けないかと試行錯誤の末に完成したのが、
銅を呈色剤として使用した「釉裏紅」という焼物です。

「釉裏紅」という焼物は以前のコラムでも紹介しましたが、
非常に難しい焼物で中々キレイな紅色に発色しないのです。

真っ青な焼物の元時代を滅ぼし、
今までとは全く違う困難な紅色の焼物に挑戦する。
そんな時代の移り変わりが陶磁器にも表れる・・
そういう時代背景を楽しむ事も古陶磁器の魅力の一つなのです。

洪武時代の典型的な文様と器形
ただし、釉裏紅の難しさをよく表し、
どす黒い紅色に発色してしまっている

(東洋陶磁美術館蔵)

こちらは、紅色がキレイに出た作品

(松岡美術館蔵)
 
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2008年4月23日(水)

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