中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第95回
焼物の裏を見よ!

現在世界中で作られている白地に青い文様を描く「青花磁器」
そのルーツは中国の南宋時代にあり、
それが元時代に大きく発展し、明時代に完成されました。

その集大成となったのが、明の宣徳期です。
宣徳帝とは、第五代の明の皇帝でしたが短命で、
その在位期間はたった10年でした。

政治的には一瞬で終わった宣徳期ですが、
中国陶磁器史において「宣徳期」は大きな意味を持ちます。

何故なら、この時代になって
正式に皇帝直属の窯(官窯)が系統だって規格化されたからです。

それまでは、民間の景徳鎮窯の中でも
特に優秀な所に発注していたと思われる皇帝の品でしたが、
この宣徳期には、専属の窯を設け
「この窯で焼く品は皇帝の注文品だけ」
と他の注文品などと完全に区別したのです。

その証拠が器物の裏に書かれてある「銘款」です。
宣徳期以来、官窯品の裏には
『大明宣徳年製』となどの銘款が書かれるようになったのです

ところが実際には宣徳期の間にも
皇帝の銘款のない品も多く焼かれている訳です。
そして、それらの品の中には
銘款のある品物より素晴らしいものもあるのですが、
国際的に取引される価格では官窯の銘款の有る無しによって
大きな差が生じます。

ちなみに「大明宣徳年製」の銘款がある官窯品は最低数百万、
良い品だと数千万以上の価格がつきます。

ですので、専門家は明時代以降の中国古陶磁器を鑑定する際には
まず裏面を見るのです。

つまり、明の宣徳期以降は官窯を証明する銘款が
陶磁器の血統書のようになってしまったという事です。

官窯の裏面に書かれてある各皇帝の時代の銘款ですが、
それぞれに特徴があります。

明も末期、すでに政治が混乱していた万暦期などは
子供の習字よりも下手くそな字体が多くなります。
それはそれで味わいがあるのですが、
この宣徳期の銘款の書体はその後の銘款の中でも
ピカ一に素晴らしいと云われています。

それはそうでしょう。
統治のきつかった明の初期の時代、
皇帝の名前を入れるのですから
下手に書けばどんな仕打ちが待っているか分かりません。

普通なら手が震えそうなものですが、
それでもしっかりと『大明宣徳年製』と書き綴った
陶工の精神力には頭が下がります。

宣徳期官窯の優品

大阪市立東洋陶磁美術館収蔵品
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2008年5月19日(月)

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