中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第102回
花開く民間のパワー「明・嘉靖期」

明も嘉靖帝時代に入る頃になると、
中国の陶磁器製作の流れに大きな変化が現れます。

それは「官」から「民」への流れです。

有史以来、陶磁器は常に権力者
特に皇帝の要求に応える為に試行錯誤が繰り返され、
製品の質を高めてきました。

つまり、陶磁器の最新技術は皇帝直属の窯
「官窯」において開発されるのが当たり前だった訳です。

ところが明時代も中期、嘉靖期の頃になると
民間の窯から自由な発想の新しい技術や
技法がどんどん生まれてくるようになります。

そして、ついには皇帝の直属の「官窯」も
それらの技術を逆に取り入れたり、
また民間の窯に皇帝の品を発注するようにまでなりました。

例えるなら、
日本の携帯電話市場を国営のNTTが独占していた時代が終わり、
少しづつ民間の事業者に開放され、
現在に至っては逆にauやソフトバンクなどに
押されるまでになったのと状況が似ています。

中国陶磁器のNTTであった「官窯」では、
民間で開発された最先端の技術を導入すると共に、
NTTが回線をライバル他社に貸しているように、
皇帝の品を優れた民間の窯にも発注するようになりました。

そのような陶磁器の変革の時代である
嘉靖期に開発された陶磁器の意匠で特徴的なのが
「金襴手」と呼ばれるものです。

金襴手とは、色々な釉薬を使用して豪華絢爛に彩色された磁器に
更に「金彩」で仕上げの装飾をした焼き物です。

その豪華さや美しさは誰が見ても理解しやすいもので、
そういう技法が陶磁器界に一気に広がったのも頷けます。

また、その豪華な彩りだけでなく装飾の様式や器形についても
この明の嘉靖期には
新しいスタイルのものが続々と現れるようになります。

それは、現代の日本においてauやソフトバンクが
いろいろな形の割引やサービスを展開しているのと
同じ現象でしょう。

やはり、いつの時代も官より
民間の発想やパワーが素晴らしいのです。

明嘉靖時代の「金襴手」の作品
器形、装飾ともに民間の陶工の自由な発想が
新しい感覚の磁器を生み出した。


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2008年6月4日(水)

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