中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第201回
中国古陶磁器 名品紹介

今回紹介する中国古陶磁器の名品は、
東京国立博物館収蔵の「南宋官窯ソウ形瓶」です。

解説リンク

南宋官窯とは、南宋時代に浙江省杭州に存在した
皇帝直属の窯で焼かれた神秘的な青磁を言います。

南宋官窯には修内司官窯と郊壇下官窯の二つの窯があり、
それぞれに特徴のある青磁を焼いています。

今回紹介する東京国立博物館収蔵の南宋官窯は
郊壇下官窯で焼かれたものです。

この郊壇下官窯青磁の特色は、
まずもって玉石(翡翠)の色を再現しようとした
その奥深い青色の発色でしょう。

当時の陶工達は、この深遠な青色の発色を得る為に
色々な工夫を重ね、
ようやくこのような焼き物を完成させたのです。

豪快にひび割れた器胎と玉のような深い青色。
焼き物に詳しくない人が見ても、
この青磁の迫力は理解できると思います。

では、具体的にどうやって
この焼き物が作られたかについて説明します。

まず、深い青色の発色を得る為に用いられる胎土は
焼くと黒く発色する異色の土です。

当時、他の窯の青磁は
できるだけ白く精製した土で焼かれていましたので、
わざわざ黒い土を使ったという事は
作為的にそれをやったという事でしょう。

つまり、黒い土と青磁釉の組み合わせに
新しい美を発見したという事です。

確かに、黒い土を使うと同じ青磁の釉薬をかけても
焼き上がりは白い土のものよりも
ずっと落ち着きのある深い色になります。

ただ、この土を使う事には一つ問題がありました。
焼き物を高温で長時間焼くと土は20%〜30%も収縮します。

特にこういう黒い陶器質の胎土は簡単に収縮してしまいますので、
青磁の釉薬との収縮率に大きな差が生まれます。
そうするとどうなるか?
そうです、器面がひび割れるのです。

しかし、当時の人の美意識はこのひび割れを「良し」とし、
更にこの作風の焼き物を突き詰めていったと思われます。

豊かな南宋時代に生まれたそういう新しい美意識が、
その後の中国古陶磁器の発展に大きく影響したのです。

今回紹介した南宋官窯は、
芸術が最も栄えたとされる南宋にあって、
更にその究極の一品なのです。
ちなみにこれと同種の焼き物が
約20年前に約2億円で落札されています。

もし今この焼き物が市場に出回れば、
その5倍の価格がついてもおかしくありません。

 
←前回記事へ

2009年1月21日(水)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ