人の言葉に左右される愚
政治家の中で、占い師のいうことを信じている人は意外に多い。私は「中央公論」誌上で連載対談をやっているが、元総理だった人から「よくあたる予言者だからぜひとも雑誌に登場させてくれぬか」と話を持ち込まれたことがある。おたのしみとか、参考にするとかいったニュアンスで、占い師にお金を払うのはよいが、一国の総理にもなるような人がその人の話をきいて行動の基準にされたのでは国の政治が泣く。というのは、方向を気にするあまり、何事をするにもいちいちお伺いをたてていた私の友人の一人は、そのために財産を失い、失意の中に死んでしまったからである。
その人は敏腕な不動産ブローカーで、私と知りあった十五、六年前は年間に百億円の売上げをし、売買手数料だけでも五、六億円稼いでいた。自分たちは他人のビルを借りて家賃を払い、収入は全部、現金だから、減価償却もなければ、金利などの経費も計上できず、まともに六〇パーセントからの税金をとられている。それではいつまでたっても資産ができないから、銀行から借金をして自社ビルを建てるように私はすすめていた。本人はハイハイとききながし、そのうちに土地の値段はドンドンあがって、私のすすめた時から、六、七年たってやっと本社ビルの建築にかかった。
あとで考えてみると、列島改造論後の最高の値段の時に銀行から借り入れを起こし、石油ショックによる暴騰のさなかで建築をはじめ、完成した時は不況におちいって借り手が現れなかったうえに、建築業者からは残金の支払いをせまられ、一方、銀行は金融引き締めで金を貸すどころか、逆に返済を迫られたので、心労のあまり病の床に伏し、とうとう不帰の客になってしまった。本人はさすがに私にはいわなかったが、占いの先生の指示通りに動く人だから、いずれそのむくいを受けたのであろう。
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