「シンデレラ・ボーイ」への決め手
日本人に比べると、中国人の社会には、占いがもっと深く根を張っており、私の家には占い師の書いた私の年代別の運命判断から妻のそれまである。なかにはよくあたっているものもあるが、あたっていないものもある。占い師によって細部についての意見が分かれ、いうことも違っているからである。そういう中に育った私でさえも、占いはまあ、参考にする程度、自戒の材料にする程度と思っている。人のショウバイの邪魔をする気はないが、あまりに深入りをする政治家や実業家の言は、たとえ大人物と世間から思われている人でも、あまり信用しないほうがよいだろう。
しかし、「貴人」に出会う必要のあることは、占いの先生の言をまつまでもなく、誰にも異存のないことであるから、その時の準備をしておくに限る。まず「貴人」といわれる人は、ふだんおしゃべりをしたり、酒を飲んだりしている友人のことではない。自分の役に立つ、自分を引き立ててくれる人だから、社会的地位も自分より高く、知識や経験や財産を自分より多く持っている人である。おそらく年齢も自分より上の人であろう。新しく入社した会社の上役かもしれないし、転勤させられた先の、同じように転勤してきた上役かもしれないし、その時は工場長程度の人だったが、みるみる出世して本社の重要ポストにつくようになる人かもしれない。いや、ひょっとしたら、廊下を歩いている折に、社長に目をかけられて、秘書室詰めに移り、中枢の仕事にかかわるような、シンデレラ・ボーイのコースかもしれない。あるいは、自分の現在の職業と全く何のかかわりもなく、有給休暇に有り金はたいて海外旅行に行ったら、旅先のホテルで偶然に知りあった人かもしれない。
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