こうして見ると、回り道をすることは必ずしも時間の浪費とはいえない。高速道路だって混雑している時は、普通の道路を走った方が早く着くことがある。まして出世階段ともなれば、表階投はひしめきあっていることが多いから、思い切って裏階段にまわるという手がある。
私は東大を卒業する時、他の同級生のように、大蔵省や日銀その他の一流企業に就職することができなかったが、仮に採用してもらったとしても社長になれる見込みは全くなかった。やむを得ず、私は台湾、香港と遠回りをし、また東京へ舞い戻って小説書きになり、年若くして直木賞をもらい、多少は世間に通用するようになった。のちに経済関係の文章も書くようになり、インタビューのために会社を訪ねると、すぐ社長室に通された。
「確か、おたくの会社に僕の同級生がいましたよ」というと、
「誰君?ふーんそうでしたか」
と誰君を呼んで来てもくれない。表階段からとことこあがっていると、まだ課長の椅子にも辿りついていないのである。むろん、誰でも私のように裏階段から素早く駆けのぼるわけにはいかないだろうが、出世街道にも表階段のほかに裏階段があることくらい、頭に入れておく必要はあるだろう。
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