私の知っている人で、台湾で一、二の高収益をあげている上場会社の社長さんがいるが、奥さんが重役に名をつらねているばかりでなく、社長室の中にまで奥さんの机がおいてある。出勤する時も一緒なら、退勤する時も一緒で、どうしても男同士の集まりで酒家と呼ばれる紅灯の巷にご亭主が行く時は、帰りの時間を見はからって車の中で待っているという警戒ぶりなのである。ひょっとしたら、過去において苦い経験を持ったことがあるせいかもしれないが、自分が片時もご亭主のそばを離れないばかりでなく、うちの女房が私を勝手放題にさせるのを見て、
「大丈夫ですか?男は油断がなりませぬぞ」
と警告を発したそうである。女房からその話をきいて、思わず大笑いをしてしまったが、中国の女たちは、男に虫がつかないように猛烈な監視をし、片時も亭主の行動から目を離さない。
近頃は国際結婚も多くなり、台湾に海外派遣された独身社員が台湾の女性と結婚する例が多くなっている。台湾の女性は「あなたが働けなくなったら、私が養ってあげます」と豪語するだけあって、経済観念の発達したのが多いし、小金も貯めているし、自分でも商売をやりたがる。下手をすると、亭主よりもお金を持っている場合もある。その代わり、亭主が今はどこにいるのか、監視の眼をゆるめず、会社にもしょっちゅう電話をかけてくるし、夜などは、友達とバーでお酒を飲んでいても、三十分ごとに電話をかけてきて、亭主を電話に呼び出したりする。
ある時、マニラに旅行に行った時にその話をしたら、フィリピン大使をしていた沢木正男さんが、「マニラなら大丈夫ですね」と言った。「どうしてですか?」ときいたら、「マニラの電話はいくらかけても通じないから」と言われて大笑いになったことがある。男の苦労も国によっていろいろと違うのである。
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