"次はここだよ"新興国投資術-戸松信博

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第79回
中国水務(0855)

香港に上場する希少な水道供給銘柄として人気の銘柄です。
世界的に水の問題が深刻化している中、
とりわけ中国の水の需給逼迫度は深刻です。
中国は水が少ない上に人口が多く、
一人あたりの水資源は世界平均の4分の1しかありません。

そのような水不足の中で、
都市化による生活の変化で水の需要は
さらに年4%増以上で増しています。
世界銀行のアナリストによると、
中国の都市水務市場は巨大で
1兆元市場になる可能性もあるとしており、
年金ファンドにとっても
良い投資先候補と考えられているようです。
世界的も水務企業の株価は
2001年以来平均で150%上昇したことで人気が高まっているのです。

また中国の水道料金は需給逼迫で上昇しており、
水務企業にとっては利益拡大が続くと見られます。
そのような中で積極的なM&Aを繰り返して
資産を大きく増やしてきた中国水務ですが、
実際業績を大きく拡大しています。
しかしながら、中国水務については会社訪問時点から
少し「?」と思えるところがありました。

訪問前に明日お伺いしますと質問事項を書いて
ファックスをしたのですが、
その質問事項に、営業利益についての細かい質問をしたのです。
(投資利益を除いたら本業は赤字になっているが、
それはどうしてなのか?など)
そしたら、その次の日のアポイントは無断でスッポかされました。
(行ったのに担当者が誰もいない)
まぁ、中国企業にはよくある話しですが・・・

しかも香港の超一等地に物凄く高級なオフィスを構えているのも、
それほど儲けていない会社なのになんだかなぁ・・・
という感じです。

で、その次の中国訪問の際に、
訪問しようとしたところ、
【もう、訪問の必要はありません(来ていただかなくて結構です)】
とむげに断わられてしまいました。
そして、実際にアニュアルレポートをよーく詳細に見てみると
【???】と感じる点が少なくありません。
まず、大幅増収増益企業ですが、
その利益の大半は取得した株式や
土地の値上がり益による「その他利益」だからです。

まぁ、それでも、
本業でも前期から比べると大きく黒字を伸ばしているのですが、
同社の場合、買収によって資産を急激に大きく増やしましたので、
たしかに黒字にはなりましたが、
本来ですと、
もっと大きく利益が増えていなければならない状態です。

分かりやすい例を言えば、
飲食店やお店を経営しているとして、
一気に10倍も新規出店すれば
売上10倍になってもある種当たり前といえ、
問題はそれだけお金を使ってどれだけ儲かったか?
が評価のポイントになります。
お金を借りて出店したのなら、
金利や配当もきちんと返して、
なおもお釣りが来なければ意味がありません。

中国水務の場合は、
確かに水が重要な資源で有望な事業になるとしても、
現段階では「その他の利益」がなければ
資産を大幅に増やした分に見合う利益を出しているとはいえません。

目先の株価の動きですが、
A株の株価推移を見る限り、
保有している株式の評価損が出そうですから、
08年3月期下半期は
このままいくとあまり良い決算ではなさそうです。
しかし、通期決算としては上半期のプラス分が大きいですから、
大幅増益を維持できるかもしれません。
ひょっとすると、これを評価して、
株価は上昇する可能性だってなくはありません。

しかし、09年3月期はこのままA株や土地が下落を続ければ、
赤字転落、あるいは大幅減益になる可能性が高いように思います。

 
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2008年3月11日(火)

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