"次はここだよ"新興国投資術-戸松信博

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第98回
中国の中小企業B2B市場は巨大

引き続きアリババ・ドット・コム(1688)に関する話なのですが、
今回を含め、あと2回ほどお付き合いください。

電子商取引だけでなく、
中国のB2B市場全体を見ると、
市場規模は20.8兆元(315兆円)と巨大です。
これは中国のGDPより大きくなっていますが、
GDPというのは総生産から中間取引を引きますので
これで正しい数字です。
このうち中小企業が占める割合が過半数以上となっています。

調査会社iリサーチ社によると、
中国B2B電子商取引について
4000万社とも言われる中国中小企業からの認知が高まっており、
市場の潜在力が巨大で急速に発展しているとされています。

背景にはIT化があり、
従来の国際商取引が変わってきています。
貿易の商談というのは直接出張に出向き、
直接店頭や訪問で始めて商品を見て取引がなされていました。
しかし何百、何千という候補先を
海の向こうから全て周って商品を見比べることはできず、
最適な買い付けが行われていたとは言えません。
実際に買い付ける前に
検索キーワードなどを使ってネット上でスクリーニングし、
比較検討した中から絞り込んだ所へ実際に出向くのが効果的です。

店頭で初めて会うのではなく、
会うときにはすでに十分絞り込まれた後で、
商品特性や価格も頭に入っているのです。
企業はショールームでじっと客が来るのを待っているのでなく、
最終的な販売の前段階で、
認知・興味を喚起するマーケティングとして
ITを使ったアプローチが重要と考えてきています。

ではこの巨大な市場のうち、
中小企業の電子商取引が占める割合というのは06年で4809億元と
まだ4%ちょっとに過ぎません。
(といっても7兆円以上と巨大ですが)
重要なのはまだ4%強に過ぎないといいながらも、
現在IT化によって急速に浸透しているマーケットで、
2012年には7.5兆元と昨年の15倍以上になるという予測が
第三者の調査機関から出ているとのことです。

これは企業間決済の全てを含みますので
この市場がそのまま全部アリババの対象
というわけではありませんが、
現在ナンバーワンで知名度もあるアリババが
市場拡大の恩恵を受ける可能性は十分に想像できます。

それでは他に競争相手はいるのかが気になるところですが、
まず貿易取引では「環球国際」という企業が
ライバル関係にあります。
しかし環球国際はハイエンド顧客をターゲットしているのに対して、
アリババは中小企業を中心に事業を展開しており、
会員数も全く違います。
また国内取引分野では「慧聰国際」という企業がありますが、
市場シェアは比べ物になりません。

このようにアリババによる「標準化」が進んでおり、
プラットフォームの性質上、
標準化を勝ち得たところにさらに寡占化が起こると予測できます。
さらにグーグルを始め、
検索キーワードサービスを持つプラットフォームが
今後ライバルになる可能性はありますが、
アリババグループは中国ヤフーを2005年に買収し、
検索事業にも参入しています。
今後は検索とB2B電子商取引を融合することで
地位を固める可能性もありそうです。

「世界の工場」中国で、
アリババの提供するプラットフォームは全30業種で
5000の商品に分けられており、
240万の仮想ストアーに、
月間290万もの新商品がアップロードされ、
多くの企業の関心を集めているようです。


<次回に続く>

 
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2008年5月15日(木)

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