"次はここだよ"新興国投資術-戸松信博

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第99回
アリババの07年決算内容を確認

アリババの07年決算は売上+59%、
営業利益+286%、純利益+340%という
素晴らしい成長が確認でき、
大幅に市場予想を上回る内容でした。

また、08年第1四半期も売上+53%増、
純利益+112%と中国本土事業の伸びを追い風に
大幅増益を続けています。
しかし株価は今の下落相場で大きく下がり、
上場来安値圏にあります。

07年決算は事前の会社側の予想利益を大きく上回りました。
また決算直前にゴールドマンサックス証券が予想した
3.3倍の利益増に対しても、
4.4倍増と大きく上回りました。
中間期と比べても下半期の利益は
上期の3.3倍と、
知名度が上がった上場後に大きく業績を伸ばしています。

粗利益率が一定なのは同じような料金体系だからですが、
製造業と違って売上が増えても
このビジネスは手間がかからないので、
相対的に人件費やその他の運営経費の占める割合が下がる分だけ
営業利益が大きく伸びるのです。
今回はそれに利息収入が純利益をさらに押し上げました。

バランスシートを見てみると、
起業直後に出ていた累積損失を一掃し、
今期の大きな純利益が利益剰余金として
始めて株主資本に組み込まれました。
総資産が増えているのは上場で得た現金の増加によるものです。

最後にキャッシュフローを見てみましょう。
資産は上場で大きく増えていますが、
それほど事業投資(投資キャッシュフロー)を必要としておらず、
人も増やしていないために販売管理費は前年から増えていません。

しかし売上額に占める販売管理費率は64%から
40%に激減しています。
このように、同じ運営コストで売上を大きく増やし、
利益を4.4倍にできるのが
IT事業の魅力の1つと言えるでしょうか。

アリババの場合、営業キャッシュフローが年々伸びており、
その範囲で事業拡大に再投資をするか、
さらに余れば配当に回す
(無借金なので財務キャッシュフローのマイナスは借入返済でなく、
主に配当金支払いを意味します)。
つまりお金には困っていませんので、
特に資金が要るからということで上場が必要な訳ではなさそうです。

現に1500億円規模でのIPOで新株発行は26.5%分のみで、
この分が買収費用など今後の事業資金として会社に入りますが、
残り73.5%は旧オーナー株の売却で会社には入りません。
現に会社は「事業拡大や
将来の合併・買収のために10億米ドルは必要としていない」
と述べているように、財務状況はもともと良好で、
製造業のように大量の資金で設備投資する必要もありません。


<次回に続く>

 
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2008年5月20日(火)

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