中国民俗研究家・上田尾一憲が語る、中国民俗の魅力

第2回
種字林誕生物語2

(前回の続き)
しかし、綺麗な花や木々を植えるのもただではありません。
それに清廉の士である呉綺は、普通の役人とは違い
私欲がなく賄賂を貰ったりもしていなかったので
役人時代にも財産を稼ぐ事が出来ず
空き地に園林を造るお金がありませんでした。
そこで彼は園林を造るにはどうすればいいのか考えました。

当時は書を書くことに自信のある人は
看板を書いてあげたり、詩を書いたりすることを
商売にしていた人もいましたので
書を書くことに自信のある呉綺は「これでいこう」と考え
早速行動を開始しました。
ただ、呉綺が普通の人と違うのは
お金を取る代わりに木の苗をもらい
看板を書いてあげたり、詩を書いてあげたりしていたのです。
お金を取らずに木の苗を報酬とする
珍しい人の書いた看板や詩はとても評判がよく
噂をきいて
たくさんのお客さんが仕事を依頼するためにやってきました。

そして、いつのまにか庭の中は
たくさんの人から頂いた木の苗で
大きなりっぱな林が出来ていたのです。
そこで自分の邸宅に
「字を書いて出来た林」
「字で植えた林」という屋号をつけたのだそうです。
そういった故事から、先生は自分のコレクションを
展示するお店の名前を決める時に
「種字林という名前はどうかな?」と提案したところ
邱グループのメンバーたちが
みんな大賛成だったので、この名前に決まったのだそうです。

でも先生は頭の片隅にあったこの故事を思い出して
種字林と名づけたのですが、
故事に出合ったのはもう40年も昔の事で、
さすがの先生もこの故事に登場した「呉綺」の
名前がどうしても思い出せず、以前先生は書斎にある
シノロジーの本を片っ端から開いて探したらしいのですが
とうとう見つからずじまいだったそうです。
そこで種字林の「番人」は早速インターネットを使って
中国語で色々と検索したところ、
ついに「呉綺」の名を見つけ出しました。
「番人も案外役に立つね」と先生はお喜びでした。


←前回記事へ 2006年4月18日(火) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ