中国民俗研究家・上田尾一憲が語る、中国民俗の魅力

第3回
邱先生、種字林と共に・・・。

中国家具コレクトショップ「種字林」の
名付け親は邱永漢先生ですが、先生と種字林には
切っても切れない深〜い思い出があるそうです。
先生が直木賞を獲った年よりもまだずっと昔のお話ですが
まだ小説家を目指す前、
先生は、小説家として生きていけるかどうか、
自分の力を試してみたいと思って
文藝春秋の「オール読物新人杯」に応募したことがありました。
900名もの応募があったのですが、
先生の作品は初めての応募にもかかわらず
最後の5作品に残ったそうです。
900作品の中の5作品に選ばれるのだから、
もしかしたらと
先生はたいそう自信をつけたようです。

しかし、これには面白いエピソードが残っています。
実は先生が応募した時に使った原稿用紙は
当時有名な作家が使っていた浅草の「満寿屋」の原稿用紙でした
東京に旅行に行った時、話にきいて
買ってきたのを使って香港から応募したのです。
後々になって親しくなった文藝春秋の記者から
満寿屋の原稿用紙が使われているところを見ると
誰か有名な作家がイタズラ心を起こして
香港から投稿したのかもしれないぞ、
どれどれと言って取り上げたのがきっかけだと
そう言ってイタズラっぽい顔付きをして
面白おかしく話をしてくれました。

プロになってからは自分の原稿用紙を
自分でつくるようになりましたが、
その時「種字林」の故事が
頭に浮かび、物書きとし生活をしていくからには、
この名前がいいのじゃないかと
「満寿屋」の原稿用紙をやめて
新しく「種字林箋」という
先生専用の原稿用紙を作ったのです。

現在でも毎日書いている
ハイハイQさんの原稿や書籍の原稿など
すべて「種字林箋」の原稿用紙が使われています。
「種字林」という命名にまつわるエピソードでした。


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