中国民俗研究家・上田尾一憲が語る、中国民俗の魅力

第33回
亀を使いこなせる人。

童謡の「ウサギとカメ」の歌のように
気軽にカメさんカメさんよと呼んでいますが
もともとカメは誰でも気軽に相手のできるような
動物ではないのです。

カメは大昔から神聖な物として
中国でも多くの言伝えが残っており
誰でもが亀を使いこなせるのではない事が
史記の「亀策列伝」の中にある
エピソードから読み取ることができます。

ある夜の事、
宋の元王が深い眠りに入っている時、
長江の神の使者という神亀が、夢の中に現れ
漁師の仕掛けた網にひっかかってしまい、
身動きが取れなくなってしまったので
助けて欲しいと言うお告げがあったのです。
朝起きて元王は早速その夢の事を
博士である衛平という者に相談すると、
直ちにその亀を探したほうが良いと言われ
早速、夢の中で聞いた場所へ行くと
そこには夢の通り漁師の仕掛けた網に
大きな神亀がひっかかり身動きがとれずにいました。

その後神亀は助けてもらったお礼を言い
立ち去ろうとしましたが、
博士の衛平はその亀を帰さずわが国の宝とし
宝蔵するべきであると王に主張しました。
しかし、神聖な亀を捕らえて殺して卜占に使ってしまうのは
バチが当たるとの意見もあり、王も神聖な亀を
自分の物とすることに抵抗がありました。
しかし、衛平は王の夢枕に立って
みずから助けを求めて来たのも、
王に徳があったからであり、
この亀を受ける資格があると王を説得しました。

結局その亀は捕らえられ、その国で
亀卜をする時に使われることとなりました。
以来、その亀の甲羅で占ったものはすべて的中したそうです。
この神亀を捕らえ使った元王は非常に徳の高い人であり
その様な人物であったからこそ
その亀を使いこなせたということです。


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