そして、日本人自身がふと頭をあげてみると、自分たちのあとにぴったりと身体を寄せて、自分たちのやっていることをそっくり真似している一群の人々のいることに気がつく。
日本人がかつてアメリカ人に密着して、アメリカのエ業のコピーをしたように、韓国、台湾、香港、そして、シンガポールといったいわゆるNIESの国々の人々が、日本人が身につけた技術を真似しようと躍起になっているのである。気の小さい日本人のなかには、「何だ、俺たちの真似をしやがって」と面と向って罵署雑言を吐く者もあるが、そのとき、その人は、自分たちがかつてアメリカ人のそっくりさんをやっていたことを早くも忘れてしまっているのである。
「日本人は忘れやすい」「忘れる特技をもっている」と私は言ったが、忘れついでに自分たちに「模倣の特技があった」ことも忘れてしまっているのである。私に言わせれば、東南アジアの人々は、いま一生懸命、日本の真似をしているが、その真似はかなり徹底していて、日本人が先輩の真似をしたところもついでに真似しているにすぎないのである。
しかし、よく考えてみると、真似は独創の始まりである。日本人は戦後、徹底的にアメリカの真似をしたが、ある水準まで来ると、独白の境地へ人ってきた。NIESの「四匹の小龍」も、いまでこそ日本のコピーに熱心だが、そのうちにどこかで日本に追いついて、それぞれ独自の特徴を発揮するようになるかもしれない。世界中の他の工業化志望の国々にしても、もし工業化に成功したかったら、日本の辿ってきた工業化の歴史をよく研究してその真似を徹底的にやれば、ある程度の目的を達することはできるはずである。

←前ページへ 次ページへ→

目次へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ