食うや食わずの戦争直後は、戦争中、共産党や組合運動が抑正されてきた反動もあって、組合運動は盛んであった。特にいままで組合のなかった家族支配下の老舗などに共産党のオルグがもぐり込んで秘密裡に組織化をすすめ、ある日突然、労働粗合が結成されると、ストが勃発した。赤旗や鉢巻きにとりかこまれて周章狼狽した旦那衆のなかには、そのまま店じまいをした人も一人や二人ではなかった。
しかし、企業内労働組合は所詮、企業内で暴れてそれでおしまいである。もしアメリカのよらな職業別組合なら、会社の回答に不満とあれば、交通機関を全部とめてしまうこともできるし、自動車や鉄鋼の生産ラインを全部ストップさせてしまうこともできる。ところが、企業によってそれぞれお家の事情が違うから、団体交渉に臨んでも企業別に賃上げ額も違うし、それを不満に思ったある企業がストに入っても、他はそれに同調しないから、ストを決行した会社は他社に漁夫の利を占められる心配がある。うっかり長期のストを決行しようものなら、顧客を同業他社に奪われて、争議の終ったころには、業界におけるシェアを失ってしまっている。
これでは思い切ったストが打てるわけがない。トヨタがストを打てば、日産やホンダやマツダは組合員も含めて、内心ほくそえむ。同じように、日産がストをやれば、このときぞとばかりに、トヨタは国内ソェアを伸ばそうとして一大キャン・へーンを展開するだろう。企業別になった労働組合は、社内では賃上げのために対立することはあっても、所詮は社内の出来事だから、話し合いのつかないことではない。社内では角つき合せても、いざライバル企業と喧嘩になれば、社内闘争は忘れて一致団結をする。こうした労使の協調は、他の国にはあまり見られない傾向であるが、もとはと言えば、チーム・ワークになれた生活の歴史からしぜんに生れたものであろら。だから、年功序列給や終身雇用制は、社員を定着させる効用があるから、これを移植すればよい、と単純に考えるわけにはいかない。
いずれ日本的経営に対する研究がすすめば、これらの制度がエ業立国を目指す国々で採用される可能性はあるが、その生い立ちを見ると、チームを組んで事にあたるという共同体意識が先にある。組織のトップに立つ人も、そのなかに受け入れられる人も、そのなかで共存する意志とルールを守る意志がなければ、愛社心を呼び起すことにはならず、所詮、鵜の真似をする烏で終るのが関の山であろう。
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