工業化は富の分配を平均化する
株主優先の経営に馴らされてきたアメリカ人や東南アジアの人々からみると、日本のこうした会社優先の経営は奇異にみえる。しかし、その結果は、会社の稼いだ利益の大半は会社に留保され、しかも次々と将来に備えた再投資に使われるので、日本の企業はアメリカの企業に比べると圧倒的に内容のよい、かつ国際競争力のある企業に育っている。そうした資産内容、業績内容を反映して株高も高水準を維持しているから、配当はそんなに多くないが株主にはキャピタル・ゲインで報いるという形になっている。
そういった意味では、株主と一線を画した日本的経営は、経営者と従業員をかなりまとまりのよいものにしている。そういった日本的経営の実態をご存じないピケンズ氏が小糸製作所の株を買い占め、アメリカ人の発想で日本社会の閉鎖性をなじっているが、日本企業の閉鎖性がかなりひどいものであることが事実だとしても、攻撃そのものもまた的がはずれているといってよいだろう。一旦、事があると、日本の経営者と従業員は利害を超えて、外敵に対して団結する習性を持っているが、企業があげた利益の分配をどうするかという段になると、途端に労使に分れて、きびしい対立をみせる。べース・アップや一時金に対する労使の交渉は毎年のようにくりかえされているが、スト寸前まで追い込まれる緊張した光景もしばしばみられる。
しかし、日本の企業は、俗に「労使のアべック闘争」と呼ばれるように、基本的には、経営者と労働組合の利害は一致しているから、無い袖は振れない代りに、造船でも、製鉄でも、基幹産業が不況に見舞われて大赤字を続けていたあいだは、べース・アップも信じられないくらい低い数字で妥結される。その代り、少しでも景気が回復し、決算が好転すると、組合の要求もふえるが、会社側もそんなに渋ったりしない。日本の企業の特徴は、利益の分配にあたって、資本家側に気前がよいというよりも、ずっと労働者側に有利に展開するということである。
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