そうはいっても、予算がぶんどり合戦の対象となり、よく多くぶんどった者ほど功労者ということになると、税金の無駄遣いはどうしても避けられないし、それが自然増収に支えられて、いくらでも膨張していくあいだ、 無駄遣いに一層はずみがつく。ただし、ある時点で国家財政の支出が収入を追い越してしまうと、それは避けられない病弊となって元に戻すことができなくなるばかりでなく、赤字はますます巨大化して行く。俗に3Kといわれたように、政府予算の金食い虫は、コメ、国鉄、健康保険の三つに代表されるようになってしまった。いずれも大盤振舞いに端を発したものであり、健康保険は自己負担を一○%徴収しただけで大幅改善されたし、国鉄は労組によってあれほど反対されていたにもかかわらず、民営に移しただけで、僅かの政治路線を除いて、一挙に黒字化してしまった。
残るコメだけは、アメリカから自由化を迫られながらも、最後のトリデとして今なお決死隊(?)によって守られているが、頑強に保護を続けているうちに国内価格が国際価格の十倍にもなるという不合理が生じてしまった。それでもなおコメ議員がムシロ旗の先頭に立って絶対反対を唱えているのは、農業の将来のことを考えてというよりは、農民票をあてにした利己的な行動であろう。というのも農業生産が国民総生産の中に占める比率はすでに二・九 %にすぎず、その中でコメの占めるパーセンテージがついに三○%を割ってしまっているからである。経済原則が働いているところで保護政策をとっても税金の無駄遣いに終ることは目にみえている。もし米価を市場価格に任せれば、財政負担が軽減されるばかりでなく生き残れる者だけが生き残って合理化が急速にすすむであろう。オレンジとグレープフルーツの自由化がなくとも、ミカンの過剰生産による価格の下落は避けられなかったが、普通のミカンに比して温室ミカンは今も十倍の価格を維持して消費者から賞味されている。おそらくそれと同じことが、牛肉についても、コメについても、起るに違いない。
成長産業の場合は、それを保護しても、自動車やコンピュータ産業にみられるように、外国の批判に曝されながらも、ある程度守り通せば、あとは自立してやっていけるようになる。ところが、斜陽化する産業は石炭、海運、コメをみてもわかるように、お金を注ぎ込んでも注ぎ込んでも、回復する見通しが立たず、手を離せばすぐに消えてなくなるものの延命をしているだけのことでしかない。国内産のコメや石炭がなくなってしまったら、消費者が困るというのなら保護のし甲斐もあるが、なくなっても代替品がすぐその穴を埋め、消費者は少しも困らないのだから、斜陽産業の保護育成はほどほどに、ということになる。

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