第39回
上場株式の配当でも確定申告する方が
税金上有利なケースがあります
平成15年4月以降、
上場株式等の配当については
金額の大小にかかわらず確定申告せずに
「源泉徴収された10%の税金」で
完了させることができることは前回説明しました
(平成20年4月以降は源泉徴収税率20%)。
申告不要で税率も10%と大変優遇されたわけですが、
それでもあえて上場株式等配当を確定申告した方が
税金上有利になるケースがあります。
1.「配当」を確定申告すると「配当控除」の適用がある
日本の会社から受ける配当については、
確定申告すると「配当控除」の適用があります。
配当控除の適用を受けると、
総合課税(累進税率)で計算された税額から
「配当控除」の分だけ税額が軽減されます。
上場株式等の配当について確定申告して
「配当控除」の適用を受ければ、
配当にかかる税金を10%より軽くできるケースも生じます。
そのような場合には、平成15年4月の税制改正後においても、
申告不要で終わらせずに確定申告した方が有利なわけです。
2.配当控除とは
「配当控除」が設けられている趣旨を説明しましょう。
ある日本の会社が利益を出しました。
この利益に対して法人税等がかかり、
その税引き後利益を財源として株主に対して配当が行われます。
その配当を受け取った個人株主の配当所得に対して
所得税・住民税がかかります。
これでは、その会社が獲得した利益に対して
法人税等と所得税等が二重にかかることになりますので、
個人投資家については「配当控除」によって
所得税の軽減をはかり、ほんの部分的な調整ですけど
二重課税の調整を行っているのです。
3.これから5年間、年間課税所得330万円以下の年は
確定申告した方が有利
平成15年4月から平成20年3月までの
5年間に受ける上場株式等(日本法人)の配当は、
確定申告せずに10%の源泉徴収で完了させるか、
確定申告して配当控除を受けるかですが、
「その年の課税所得(配当所得を含む)が330万円以下」
である場合には、
配当についても確定申告した方が税金上有利になります。
(1) 配当所得も含めた課税所得金額が330万円の場合には、
適用される最高税率(所得税・住民税合計)は20%です。
(2) その場合の配当控除は、配当所得に対して12.8%
(所得税・住民税合計)です。
(3) 差し引き、配当所得に対する税負担は、7.2%になります。
(4) 確定申告して配当控除の適用を受ければ、
配当受け取り時に源泉徴収された税金10%
(所得税7%・住民税3%)から、
納め過ぎた税金2.8%(10−7.2)を
返してもらうことができます。
*上記説明は平成16年1月から
平成20年3月に受ける配当に関する仕組みです。
平成15年4月〜12月に受ける配当は、
源泉徴収される税金10%がすべて所得税であり
住民税は非課税であるため上記説明と若干数字が異なりますが、
「年間課税所得330万円以下は
確定申告した方が有利である」
という結論に変わりはありません。
執筆:TFPコンサルティンググループ(株)税理士 布施麻記子
監修:公認会計士 山田淳一郎
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