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山田淳一郎さんのトクする税金の話

第43回
外国株式の税金

ここでは日本国内の証券会社で買い付けた
外国の上場会社の株式を売却した時、
外国の会社の株式配当を受けた時の税金について整理します。
ここでいう「外国の上場会社の株式」は、
上場している市場について日本・外国を問いません。
つまり、本社(本店)所在地が外国にある上場会社です。
 
1.外国株式の売却の税金
  日本国内の証券会社で買い付けた
  外国の上場会社の株式については、
  通常証券会社に保護預りされており
  証券会社を通じて売却するのが一般的です。
  その場合の外国の上場会社の株式売却の税金取り扱いは、
  日本の上場会社の株式売却と同じです。

  つまり、売却利益については、平成15〜19年は税率10%、
  平成20年以降は税率20%です。

  売却損については、同じ年の株式売却益と相殺し、
  相殺し切れずに残った上場株式(外国株式)の売却損は
  確定申告すれば翌年以降3年間繰り越すことができます。

2.外国株式の配当の税金
  日本の証券会社を通じて買い付け保管委託している
  外国法人の株式については、
  日本の証券会社を通じて配当を受取ります。
  この外国法人の株式配当に対する税金は
  日本法人の株式配当と同じ取り扱いです。
  ただし、外国会社からの配当については
  「配当控除」の適用はありません。
  が、外国で税金が源泉徴収されている場合には
  その外国の税金の全部または一部が控除される
  「外国税額控除」の適用があります
  (外国税額控除の適用を受けるためには確定申告が必要です)。

  外国の上場会社の株式配当についての
  日本における税金取り扱いを整理します。

(1)源泉徴収
   外国の上場会社の株式配当を受ける際に、
   とりあえず前払い税金として所得税・住民税合計10%
   (平成20年4月以降は20%)が源泉徴収されます
   (源泉徴収するのは、日本における配当の支払い者、
   すなわち証券会社です)。
   なお、外国の会社からの配当金について
   当該外国で既に税金が源泉徴収されている場合には、
   その外国税金の天引き後の金額に対して
   10%(平成20年4月以降は20%)が日本で源泉徴収されます。

(2)原則:確定申告
   翌年確定申告して、給与所得等のその他の所得と合算して
   累進税率が適用されます(総合課税)。
   当該株式の発行会社(外国の会社)が配当を払う際に、
   当該外国で税金が源泉徴収されている場合には、
   当該外国の税金を控除する前の金額が
   「配当収入」になります。

   確定申告した場合でも、
   外国株式配当について「配当控除」の適用はありません。

   確定申告した場合、当該株式の発行会社(外国の会社)が
   配当を払う際に当該外国で
   税金が源泉徴収されている場合には、
   当該外国の税金(所得税等)と
   日本の税金(所得税等)が二重に課税されていますので、
   その調整のための「外国税額控除」の適用があります。
   外国の税金の一部を、日本の税金から控除するものです。

(3)金額の大小にかかわらず確定申告不要
   外国の上場会社の株式については、
   配当金の金額の大小にかかわらず
   確定申告しないとすることも可能です。
   その場合には、源泉徴収された税金
   (10%、平成20年3月以降は20%)で課税は完了します。
   仮に外国で税金が源泉徴収されていても、
   その外国の税金について特別の取り扱いはありません
   (外国で源泉徴収されて完了です)。

(4)確定申告するか、申告不要とするか?
   平成15年4月〜平成20年3月において、
   外国の上場会社の株式配当は、
   確定申告した方がよいでしょうか、
   確定申告せずに10%課税で完了させた方が
   税金上得でしょうか?

   結論は、「他の所得の有無およびその金額」によって
   変わります。
   配当所得は他の所得と合算した上で
   累進税率が適用される総合課税であること、
   そして、外国税額控除も他の所得の有無・金額によって
   控除額が変わるためです。

   大雑把ではありますが判断の基準をいいますと、
   配当所得(外国の上場会社の配当)
   以外の所得が全くない年は、
   外国の上場会社の株式配当については確定申告して
   「外国税額控除」の適用を受けた方が
   日本における税負担が10%より小さくなるため有利です
   (ただし、外国で源泉徴収された税率が
    租税条約による15%の場合)。
   外国の上場会社の配当からなる配当所得と
   その他の所得がある人は
   各々の金額によって結論は変わりますが、
   申告しない方が有利なケースが一般的です。

   外国における配当に対する源泉徴収の仕組みも
   異なることがありますので、
   これらについては専門家に確認して下さい。

執筆:TFPコンサルティンググループ(株)税理士 布施麻記子
監修:公認会計士 山田淳一郎


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