プロが教えます!公認会計士
山田淳一郎さんのトクする税金の話

第55回 生前贈与のための新相続税制
損な新贈与の使い方「価値が減る物の新贈与は損」

相続財産が8億円あり、
相続人が配偶者と子供2人というケースを例にして
新贈与を使うと損になってしまうケースをご紹介します。
子供の1人に2億円の財産を生前に贈与して
新制度を選択したところ、
相続までにその贈与財産が値下がりして1億円になったとします。

まず贈与時における贈与について子供が支払う贈与税は、
贈与財産2億円から非課税枠の2,500万円を控除した残額に
20%の税率を乗じた3,500万円です。

(2億円−2,500万円)×20%=3,500万円

その後に贈与者である親が亡くなった場合には
6億円の相続財産が残っているわけですが、
これに新贈与を利用して
生前に贈与した財産を加算する必要があります。
その際、たとえ相続時に財産が1億円に値下がりしていても
相続税計算上は贈与時の価額2億円で加算する必要がありますので、
加算後における相続税計算上の財産は8億円になります。

この財産額に基づき相続税額を計算し、
配偶者の税額軽減を最大限に活用した上で
贈与時に支払った贈与税3,500万円を差し引くと
最終的に納付すべき相続税は8,650万円になります。
つまり、新贈与を実行した場合のトータルの税負担は、
贈与時に支払う贈与税3,500万円と
相続税8,650万円の合計の1億2,150万円です。

一方で、新贈与を実行しないままに
相続が発生したケースの場合の相続財産は、
2億円の財産が1億円に値下がりしたことから7億円となり、
この場合の相続税額は配偶者の税額軽減を
最大限に活用すると9,900万円となります。

前述の新贈与を行った場合と異なり、
値下がりした財産を相続の時点で親自身が所有しているため、
所有財産の価値が下がると相続財産が減少することになり、
その結果相続税額も減ることになります。

つまり、新贈与を利用した場合には
相続時に贈与財産を相続財産に加算する必要がありますが、
その際の価額はたとえ贈与後に価値が減ったとしても
贈与時の高い価額になります。
ですから価値が減る財産を新贈与により贈与してしまうと、
贈与をしなかった場合よりも
かえって相続税の負担が重くなってしまい損です。

失敗の具体例で最も分かり易いケースを一つ。
新贈与を活用して建物を父から子に贈与した場合で、
父の生存中に建物が古くなって取り壊したケースです。
父の死亡の時点では建物は無くなっているのに
相続税上は贈与時の評価額をもって
相続財産に加えて税金の計算をしなければならない、
だから新贈与は失敗だったわけです。

執筆:税理士法人 山田&パートナーズ税理士 壽藤里絵
監修:公認会計士 山田淳一郎


←前回記事へ 2003年9月30日(火) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ