プロが教えます!公認会計士
山田淳一郎さんのトクする税金の話

第69回 生前贈与のための新相続税制
新制度
いわゆる生前贈与による相続税軽減効果はない

子どもが新制度を利用して
親から財産の贈与を受けた場合、
その後に贈与者である親が亡くなったときには、
相続財産に贈与を受けた財産を加算して
相続税を計算します。

したがって、贈与を受けた財産は
相続時に相続財産として持ち戻されることから、
贈与する財産の価格(もしくはその財産から生ずる収益)に
贈与の前後で大きな変動がなければ、
新制度で親から生前贈与を受けても
表面的には相続税軽減効果はありません。
むしろ、原則の贈与税制
(基礎控除額110万円の制度)を使って
長期間かけて贈与を行うほうが
相続税軽減策としては有効です。

設例を使ってご説明しましょう。
<設例>
1.前提

  父が15年後に亡くなると仮定
  父の所有する財産の価格 3億円
  (所有する財産の価格は現時点と相続時で変動なし)
  相続人は子ども1人(基礎控除額6,000万円)

2.贈与方法別にみた納付税額の比較
 
<ケース1>−新制度を選択して2,500万円贈与

 (1)贈与税:なし(但し申告必要)

 (2)相続財産:3億円(3億円−2,500万円+2,500万円)

 (3)相続税:7,900万円((3億円−6,000万円)×40%
         −1,700万円)

 (4)納付税額:((1)+(3)) 7,900万円

 <ケース2>−従来の制度を選択して
         毎年100万円を10年間贈与

          (贈与の意思決定は毎年行う)

 (1)贈与税:なし(申告不要)

 (2)相続財産:2億9,000万円(3億円−100万円×10年)

 (3)相続税:7,500万円((2億9,000万円−6,000万円)
         ×40%−1,700万円)

 (4)納付税額:((1)+(3)) 7,500万円

 <ケース3>−従来の制度を選択して
         毎年250万円を10年間贈与

 (1)贈与税:140万円((250万円−110万円)×10%
         ×10年)

 (2)相続財産:2億7,500万円(3億円−250万円×10年)

 (3)相続税:6,900万円((2億7,500万円−6,000万円)
         ×40%−1,700万円)

 (4)納付税額:((1)+(3))7,040万円
 
上記のように、新制度を適用した場合には、
生前贈与をするか否かにかかわらず
相続財産は3億円となり相続税額の軽減にはつながりません。

一方、従来の制度を選択した場合には
相続財産が実際に減少するため、
相続税額が少なくなります。

更に、ケース3のように
相続財産にかかる相続税の税率(40%)よりも
贈与財産にかかる贈与税の税率(10%)を低くして、
少し贈与税を払ってでも
基礎控除110万円を超える贈与をしておいたほうが、
結果として最終的な納付税額(贈与税と相続税の合計額)が
少なくなるということがご理解いただけると思います。

執筆:(株)東京ファイナンシャルプランナーズ 税理士 鈴木 寛
監修:公認会計士 山田淳一郎


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