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山田淳一郎さんのトクする税金の話

第85回 生前贈与のための新相続税制
新制度を選択して成功「高収益を子どもに」

地主の乙さんに、
全国展開をしているレストランから
土地を借りたいとの申出がありました。
保証金2000万円、地代年額900万円で
期間15年の事業用定期借地権(注)を
設定したいということです。

この土地は時価1億5000万円
(路線価で1億2000万円)であり
条件の良い話なのですが、
乙さんは他にも賃貸マンションや
駐車場を持っていることから
不動産所得が多く、
毎年納める所得税が高額です。
そこで、新制度を利用して
この土地を所得の少ない長女に贈与しようと考えました。
贈与税1900万円((1億2000万円−2500万円)×20%)は
レストランから預かる保証金で賄う予定です。

ご存知のように、
所得税は住民税と併せて15%〜50%の累進税率です。
所得が高いほど税率も高くなり、
課税所得が年1800万円を超える部分については
最高税率50%が適用されます。

現在の乙さんの課税所得は既に1800万円超であり、
一方、長女にはパート収入があるものの
諸控除(給与所得控除や基礎控除など)を差し引くと
課税所得はゼロです。

固定資産税を100万円として単純計算すると
この土地の賃貸利益は年800万円。
これが乙さんの所得となる場合の所得税・住民税は
400万円(800万円×50%)ですが、
長女の所得となる場合は200万円
(800万円×33%−控除額64万円)程度になると
見込まれますので、
税負担は半分で済むことになります。

さらに資産家の乙さんにとって
この贈与にはもう一つメリットがあります。
乙さんの収入となる場合は
税引後手取額400万円
(収入900万円−経費100万円−税金400万円)が
財産として毎年増加し、
期間15年で6000万円(400万円×15年)相当が
相続税の対象金額に加わりますが、
贈与しておけば増加するのは長女の財産ですから
相続税が増える心配がありません。

このケースでは、新制度の活用で所得税と相続税、
ダブルのメリットが得られることになります。

(注)事業用建物の所有を目的とする
   存続期間10年以上20年以下の借地権(借地借家法第24条)。
   期間満了による法定更新がなく、
   借地権者の建物買取請求権もありません。

執筆:税理士法人山田&パートナーズ 税理士 佐伯草一
監修:公認会計士 山田淳一郎


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