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山田淳一郎さんのトクする税金の話

第94回 生前贈与のための新相続税制−中級編
海外に住む子どもが受ける生前贈与と新制度

海外に住む子供が
新制度を選択できるかどうかは、
贈与財産について何も制限されていない「一般の新制度」と、
子供の自宅購入等のための現金贈与をした場合に適用できる
「新制度の特例」とでは取扱いが異なります。
したがって、2つのケースに分けて説明します。

1.一般の新制度

新制度は、65歳以上の親から
20歳以上の子供に贈与した場合に
選択することができます。

贈与を受ける人(受贈者)の要件は、
「贈与を受ける年の1月1日において
 20歳以上である贈与者の子供
(養子、代襲相続人である孫等を含む)」
であることだけですから、
海外に住む子供であっても、20歳以上であれば
「一般の新制度」を選択することができます。

ところで、贈与税は
受贈者が負担することになっていますが、
その受贈者が贈与を受けた時に
どこに住んでいるかにより
贈与税の対象となる財産の範囲が異なります。

受贈者が贈与時に
「(1)日本に住んでいる」か
「(2)海外居住者で、かつ日本国籍をもっている
(贈与者と受贈者の2人がともに贈与日前5年以内の間に
 日本に住んでいない場合
(以下、「一定の場合」という)を除く)」場合には、
贈与を受ける財産が世界中どこにあっても
全て贈与税の対象になりますが、
「(3)受贈者が海外居住者で日本国籍をもっていない
(一定の場合を含む)」場合には、
日本国内にある財産だけが
我が国の贈与税の対象になります(下表参照)。

このため受贈者が親から受ける贈与について
新制度を選択した後であっても、
贈与財産の所在場所によっては
新制度の対象とならないケースがあります。

具体的にいいますと、受贈者が贈与時に
「(3)海外居住者で、かつ日本国籍をもっていない」場合には
国内財産だけが贈与税の対象となることから、
たとえば、この(3)に該当する受贈者が
父からの贈与について新制度を選択した後に
父から国内財産を贈与された場合には
新制度が適用されますが、
国外財産を贈与された場合には
贈与税の対象とならないため新制度は適用されません。

なお、受贈者が「(1)日本に住んでいる」か
「(2)海外居住者で、かつ日本国籍をもっている」場合には、
子供が新制度を選択した後に
その親から受ける贈与は
全て新制度の対象になりますので、
上記のようなケースは生じません。
 
2.子供の自宅購入等のための現金贈与をした場合の
  新制度の特例

子供の自宅購入等のための現金贈与をした場合に適用できる
「新制度の特例」は、
受贈者である子供が「(1)日本に住んでいる」か
「(2)海外居住者で、かつ日本国籍を持っている
 (一定の場合を除く)」場合に限られています。
その他にも「取得する住宅が国内にあること」、
「贈与した年の翌年3月15日までに
 その住宅を取得し居住すること」等の要件があり、
これらの要件も全て満たさなければ適用できません。

したがって、海外に住む子供が
新制度の特例の適用を受けられるのは、
たとえば、父が日本に住んでおり、
日本国籍をもっている子供は
贈与時には海外に住んでいたが、
その後日本に帰国し、
贈与を受けた年の翌年3月15日までに
日本にある住宅を取得しその住宅に住む、
といった限られたケースになります。

執筆:(株)東京ファイナンシャルプランナーズ 税理士 五関幸子
監修:公認会計士 山田淳一郎


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