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山田淳一郎さんのトクする税金の話

第95回 生前贈与のための新相続税制−中級編
新制度を選択して贈与を受けていた長男が、
相続を放棄したら

子供が新制度を選択して受けた贈与財産にかかる税金は、
最終的にはその贈与者である親の相続時に
精算することになっています。
この仕組みは、新制度を選択した子供が
贈与者である親の死亡後に相続放棄の手続きを行って
その贈与者の相続人でなくなった場合も同じです。
つまり、新制度を選択した子供は、
父の相続時に相続人であるか、否かにかかわらず、
新制度により受けた贈与財産を相続財産に加算して
相続税額を計算し、
新制度により受けた贈与財産にかかる相続税を
精算しなければなりません。

父の財産が3億円、相続人が長男、
次男の2人のケースでみてみましょう。
長男は、父から1億円の贈与を受け新制度を選択し、
1,500万円の贈与税を納付しました。
その後父の相続が発生、
その時点で長男は相続放棄手続きを行ない相続を放棄、
その結果2億円の相続財産は次男が相続しました。

このように長男が父の相続に際して相続放棄を行ったとしても、
長男が新制度により贈与を受けた財産1億円(贈与時の評価額)を
父の相続財産2億円に加算して
相続税を計算しなければなりません。
したがって、相続税計算上の相続財産は全部で3億円となり、
これにかかる相続税の総額は5,800万円となります。

次に、各相続人が負担する相続税額を計算します。
この税額は相続人等が取得した財産の取得割合に応じて
按分します。
相続税計算上の相続財産が3億円で、
そのうち次男が2億円、
長男が1億円(新制度による贈与財産の贈与時の価額)を
取得したとして計算します。

つまり、財産の取得割合は次男が2/3(2億円÷3億円)、
長男が1/3(1億円÷3億円)となりますから、
各人の相続税額は、次男が3,867万円
(5,800万円×2/3≒3,867万円)、
長男が1,933万円(5,800万円×1/3≒1,933万円)となります。

ただし、長男は贈与時に1,500万円の贈与税を納付していますので、
1,933万円から1,500万円を差し引いた後の
433万円の相続税を納付することになります。

つまり、長男は父の相続に際して相続放棄をして
父の相続人でなくなった場合であっても、
父の相続時において新制度により
贈与を受けた財産にかかる相続税を
精算しなければならないわけです。

執筆:(株)東京ファイナンシャルプランナーズ 税理士 五関幸子
監修:公認会計士 山田淳一郎


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