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山田淳一郎さんのトクする税金の話

第96回 生前贈与のための新相続税制−中級編
新制度を受けた子ども、何も相続しなくても納税が生じる

子供が新制度を選択して受けた贈与財産にかかる税金は、
最終的にはその贈与者である親の相続時に
精算することになっています。
この仕組みは、新制度を選択した子供が
贈与者である親の死亡時に
相続財産を取得しなかった場合でも同じです。
つまり、新制度を選択した子供は、
父の相続発生時に相続財産を取得したか、
しなかったかにかかわらず、
新制度により受けた贈与財産を相続財産に加算して
相続税額を計算し、
新制度により受けた贈与財産にかかる相続税を
精算しなければなりません。

父の財産が5億円、相続人が妻、
長男、長女の3人のケースでみてみましょう。
長男は、父から1億5,000万円の贈与を受け新制度を選択し、
2,500万円の贈与税を納付しました。
その後父の相続が発生し、
3億5,000万円の相続財産は、
妻が2億5,000万円、長女が1億円相続しました。

長男は父の相続に際して
一切相続財産を取得していませんが、
新制度により贈与を受けた財産1億5,000万円(贈与時の評価額)を
父の相続財産3億5,000万円に加算して
相続税額を計算しなければなりません。
したがって、相続税計算上の相続財産は全部で5億円となり、
これにかかる相続税の総額は1億1,700万円となります。

次に、各相続人が負担する相続税額を計算します。
この税額は相続人等が取得した財産の取得割合に応じて
按分します。
相続税計算上の相続財産が5億円で、
そのうち妻が2億5,000万円、長女が1億円、
長男が1億5,000万円(新制度による贈与財産の贈与時の価額)を
相続したとして計算します。
つまり、財産の取得割合は妻が0.5(2.5億円÷5億円=0.5)、
長男が0.3(1.5億円÷5億円=0.3)、
長女が0.2(1億円÷5億円=0.2)となりますから、
各人の相続税額は、妻が5,850万円
(1億1,700万円×0.5=5,850万円、ただし、配偶者の特例により
 納税すべき額はゼロになる)、
長男が3,510万円(1億1,700万円×0.3=3,510万円)、
長女が2,340万円(1億1,700万円×0.2=2,340万円)となります。

長男は贈与時に2,500万円の贈与税を納付していますので、
3,510万円から2,500万円を差し引いた後の
1,010万円の相続税を納付することになります。

つまり、長男は父の相続に際して
相続財産を一切取得していない場合であっても、
父の相続時において新制度により
贈与を受けた財産にかかる相続税を
精算しなければならないわけです。

執筆:(株)東京ファイナンシャルプランナーズ 税理士 五関幸子
監修:公認会計士 山田淳一郎


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