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山田淳一郎さんのトクする税金の話

第97回 生前贈与のための新相続税制−中級編
父より先に長男に相続発生
妻と孫が新制度の権利・義務を引き継ぐ

子供が新制度を選択して受けた贈与財産にかかる税金は、
最終的にはその贈与者である親の相続時に
精算することになっています。
しかし、もしもその子供が父より先に亡くなった場合には、
その子供は父の相続時に相続税を精算することが
できなくなってしまいます。

このような場合には、
その子供の相続人即ち妻や孫が
子供の相続税の納税義務
又は還付を受ける権利を引き継ぎ、
親の相続時に相続税を精算することになります。

この場合にその子供の相続人
つまりここでいう孫にあたる子供等が2人以上いるときは、
各相続人が引き継ぐ納税義務
又は還付を受ける権利の割合は、
原則として法定相続分となり、
相続人間で自由に決めることはできません。

たとえば、父の相続人は子供1人、
子供の相続人は妻と孫1人の計2人のケースでみてみましょう。
子供が父から1億円の贈与を受け新制度を選択し、
贈与税1,500万円を納付しました。
その後父よりも先に子供が亡くなった場合には、
その子供の相続人、
このケースではその子供の妻と子(孫)が
子供の相続税の納税義務を2分の1ずつ引き継ぎます。

子供が亡くなった後に
父の相続が発生した場合の父の相続人は、
孫1人となります(本来父の相続人は子供ですが、
子供が父より先に亡くなっているため、
子供の相続権は孫が引き継ぎます)。

父の相続財産が2億円で、
相続人である孫が2億円全部を相続した場合、
父の相続税計算上の財産額は、
相続財産2億円に亡くなった子供が
新制度により贈与を受けた1億円(贈与時の価額)を加算した
3億円となり、
これにかかる相続税総額は7,900万円となります。

この場合、2億円の相続財産にかかる相続税は
相続財産を取得した孫が負担し、
1億円の贈与財産にかかる相続税は
亡くなった子供の相続税の納税義務を引き継いだ妻と
孫が2分の1ずつ負担することになります。

妻は父の相続において「相続人」ではありませんが、
本来子供が精算すべきであった
相続税の納税義務を引き継いでいるため、
妻も孫と一緒に相続税を負担するわけです。

このケースでは、2億円にかかる相続税は5,267万円
(7,900万円×2億円/3億円≒5,267万円)、
1億円にかかる相続税は2,633万円
(7,900万円×1億円/3億円≒2,633万円)ですから、
2億円にかかる相続税5,267万円は孫が負担し、
1億円にかかる相続税2,633万円から
亡くなった子供が納付した贈与税1,500万円を差し引いた
1,133万円の2分の1ずつ(566万5,000円)を
妻と孫が負担します。

つまり、亡くなった子どもの納税義務を引き継いだ妻と孫は
それぞれ566万5,000円ずつ
孫は2億円の相続財産にかかる相続税と合わせると
合計で5,833万5,000円納付することになります。
なお、子供が納付していた贈与税額が
亡くなった子供にかかる相続税額を超える場合には、
その超える部分の金額の各2分の1ずつを
妻と孫が還付を受けることになります。

執筆:(株)東京ファイナンシャルプランナーズ 税理士 五関幸子
監修:公認会計士 山田淳一郎


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