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山田淳一郎さんのトクする税金の話

第98回 生前贈与のための新相続税制−中級編
父より先に長男に相続発生 長男に子どもがいないケース

新制度を選択した子供が
その贈与者より先に亡くなった場合には、
その子供の相続税の納税義務
又は還付を受ける権利は子供の相続人が引き継ぎ、
その相続人が相続税を精算することになっています。
なお、子供の相続人が2人以上いるときは
各相続人が引き継ぐ納付義務
又は還付を受ける権利の割合は、
原則として法定相続分となります。

今回は、新制度を選択した長男に
妻はいるが子供がいないケースをみてみます。
長男が父から1億円の贈与を受け新制度を選択し、
贈与税1,500万円を納付しました。
その後父よりも先に長男が亡くなった場合には、
長男の相続人が長男の受けた贈与財産にかかる相続税の
納税義務を引き継ぎます。

このケースでは長男の相続人は妻と父母になりますが、
長男の納税義務は父の相続時に発生するものであり
父が引き継ぐことはできませんので、
長男の妻と母が長男の納税義務を引き継ぎます。

この場合に引き継ぐ納税義務の割合(法定相続分)は
長男の妻が3分の2、父母が3分の1ですが、
父は引き継ぐことができないので
母が3分の1を引き継ぐことになります。

長男が亡くなった後に父の相続が発生した場合には、
父の相続人は母1人となります。
父の相続財産が2億円で、
相続人である母が2億円全部を相続した場合、
父の相続税計算上の財産額は、
2億円の相続財産に亡くなった子供が新制度により
贈与を受けた1億円(贈与時の評価額)を加算した3億円となり、
これにかかる相続税の総額は7,900万円となります。

この場合、相続財産2億円にかかる相続税は
5,267万円(7,900万円×1億円/3億円≒5,267万円)、
贈与財産1億円にかかる相続税は2,633万円
(7,900万円×1億円/3億円≒2,633万円)となりますから、
2億円にかかる相続税5,267万円は母、

1億円にかかる相続税2,633万円から
亡くなった子どもが納付した
贈与税1,500万円を差し引いた1,133万円の3分の2の755万円
(1,133万円×2/3≒755万円)は妻、

残り3分の1の378万円((1,133万円×1/3≒378万円)は
母が負担することになります。
ただし、母が相続した2億円にかかる相続税5,267万円は
配偶者の特例によりゼロとなりますので、
納付する必要はありませんが、
長男の分を引き継いだ378万円については
本来であれば長男が納付すべき税額であり
配偶者の特例の対象とはならないため、納付が必要です。

執筆:(株)東京ファイナンシャルプランナーズ 税理士 五関幸子
監修:公認会計士 山田淳一郎


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