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山田淳一郎さんのトクする税金の話

第99回 生前贈与のための新相続税制−中級編
父より先に長男に相続発生 長男に妻子がいないケース

新制度を選択した子供が
その贈与者より先に亡くなった場合には、
その子供の相続税の納税義務
又は還付を受ける権利は子供の相続人が引き継ぎ、
その相続人が相続税を精算することになっています。

今回は、新制度を選択した長男に
妻子がいないケースをみてみましょう。
長男が父から1億円の贈与を受け新制度を選択し、
贈与税1,500万円を納付しました。
その後父よりも先に長男が亡くなった場合、
長男の相続人が長男の受けた
贈与財産にかかる相続税の納税義務を引き継ぎます。

このケースでは長男の相続人は両親になりますが、
長男の納税義務は父の相続時に発生するため
父が引き継ぐことはできませんので、
母が長男の納税義務を全て引き継ぐことになります。

長男が亡くなった後に
父の相続が発生した場合の父の相続人は母と祖父、
祖母の計3人になり、
各相続人の法定相続分は母が3分の2、
祖父と祖母が6分の1ずつとなります。

父の相続財産が2億円で
相続人がこの2億円を相続した場合、
父の相続税計算上の財産額は、
2億円の相続財産に亡くなった長男が
新制度により贈与を受けた1億円
(贈与時の評価額)を加算した3億円となり、
これにかかる相続税の総額は約5,230万円となります。

この場合に、2億円の相続財産にかかる相続税3,487万円
(5,230万円×2億円/3億円≒3,487万円)は
相続財産の取得割合に応じて母と祖父母が負担し、
1億円の贈与財産にかかる相続税1,743万円
(5,230万円×1億円/3億円≒1,743万円)から
亡くなった子供が納付した贈与税1,500万円を差し引いた243万円は
母が負担することになります。

なお、長男の相続発生時に
既に母が亡くなっており
長男の相続人が父1人であるときは、
父は長男の贈与財産にかかる相続税の納税義務を
引き継ぎませんし、
その父の相続人も長男の当該納税義務は
引き継がないことになっています。

したがって、長男が亡くなった後に
父の相続が発生した場合の相続税は、
父の相続発生時における相続財産そのものだけで計算します。

つまり、長男が新制度により受けた贈与財産の贈与時の価額を
加算する必要はないということです。
なお、この場合、長男が納付した贈与税1,500万円は
納付したままとなり、還付されることはありません。

執筆:(株)東京ファイナンシャルプランナーズ 税理士 五関幸子
監修:公認会計士 山田淳一郎


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